マンションにおける電気設備???
電気器具を同時にたくさん使って、「ブレーカーが落ちた!」時に触る住宅用分電盤以外はあまり意識することないかもしれません。実は、いろいろとあります。
エレベーターや消防設備のように、毎年の法定点検はありませんが、20年~40年で更新する必要が出てきます。
電気設備の維持管理などについて、電力会社とマンション管理組合の保安上の管理責任範囲を分けている点(場所)をいいます。
保守や点検が必要な機器の維持管理や、装置や電路に事故が発生した場合の責任所在がどちらにあるかを示しており、その責任が区分される点を定めている。
電力会社から電気の供給を受ける場合、架空配電地域では1号柱を建柱し、気中開閉器(PAS)を設けることになるが、この機中開閉器が責任分界点となる。
PAS本体は需要家側が用意するが、PAS本体に設けられている「口出線」に、電力会社が接続する。
接続工事は電力会社が行うので、接続点で事故が発生した場合は電力会社の責任となる。
電力を地中引込とする場合は、高圧キャビネットを地表面に設置する。高圧キャビネットの内部にジスコンまたはUGSを設けるが、これが責任分界点となる。
一般住宅では電力会社より低圧で供給されるが、マンション等の建物についてはその扱いは均一でありません。 電源供給は、供給電圧によって「低圧引き込み」「高圧引き込み」「特別高圧引き込み」の3種類に区別されます。
マンションの場合は各住戸の契約電力の合計と共用部分の総量で引き込み方式が決定します。
マンションの電力総量が50kW以上になると高圧引き込みに方式になり、敷地内に電力会社の借室変電設備(借室電気室など)を設け、高圧から低圧に電圧を変換して各住戸に送電します。
借室電気室とは、電力会社が建物内に必要なスペースを無償で借り、住戸部分及び共用部分に必要な電圧の電力を供給する変電設備で、維持管理は電力会社が全て実施します。
キュービクル式高圧受電設備は、高圧で受電するための機器一式を金属製の外箱に収めたもので、単に「キュービクル」(Cubicle)とも呼ばれます。
6,600Vで受電した電気はキュービクル内で100Vまたは200Vに変圧され、施設に供給されます。
建物内に変電室のためのスペースがない場合等に置かれるもので、小型軽量な箱型に全部を収納してある受電装置である。
屋内型は地下室、階段室、屋上塔屋等に設置でき、屋外型は建物外の地上に据え付けられる。
キュービクルの寿命と耐用年数
キュービクルは電気設備の一つですから、耐用年数や寿命を考慮した管理が必要です。屋外設置と屋内設置で大きく寿命が変動しますし、電流の流し方、使い方によっても大きく変動します。キュービクルの外箱は単なる鋼板です。
清浄な屋内環境で、再塗装、補修、清掃をしっかりと行っているなら50年~60年は問題なく維持できます。
しかし、屋外設置の場合は雨、潮風、酸化ガスなどの影響を受けるため、各所に錆が発生するおそれがあります。頻繁なメンテナンスを実施しても、20年~30年で全面が腐食しますので、交換が必要となります。
内部に収容されている高圧機器については、外箱とは別に、個別管理を行う必要があります。
負荷開閉器、遮断器などは、短絡電流など事故電流を経験していなければ、15年~20年は問題なく使用できますし、実際に30年近く運用し続けている高圧機器を確認したこともあります。
しかし、負荷電流の繰り返し開閉、事故電流の遮断などを経験していれば、短期間で耐用年数を超過してしまうことがあります。長期間使用した高圧機器は、交換部品が手に入らなくなることがあります。
このような機器が故障してしまうと、長期間の停電になるなど問題になりますので、交換部品がなくなった場合は、すぐに新品に交換するよう計画します。
定期点検などで、異常な絶縁低下が発生している場合、異音異臭、焦げ跡などが発生している場合は、運用年数に関わらず交換することが望まれます。
不良が発生している開閉器、遮断器を使用しすると、負荷開閉時や遮断時にアークを消弧できず、短絡事故などが発生します。
高圧ケーブルや母線は、屋内であれば30年~40年程度、屋外であれば20年~30年で使用限界となり、交換が必要です。ケーブルや母線は、目視で異常を発見することが困難ですから、精密点検などで異常が確認できた場合、すぐに交換するようにしましょう。
自家用電気工作物は、下記いずれかに該当するものは、全て自家用電気工作物に分類されます。
・他のものから600Vを超える高圧、または特別高圧で受電するもの
・構外にわたる電線路を有するもの
・小出力発電設備以外の発電設備(非常用を除く)が同一構内にあるもの
例えば、電力会社から高圧で受電を行う場合、3,300Vや6,600Vが一般的な電圧として設定されていますので、「600Vを超える電圧」という分類になりますので、自家用電気工作物に該当します。キュービクルは自家用電気工作物に該当します。
保守業務の違い
何が違うのかというと、『一般用電気工作物』は電力会社が保安業務を担いますが、『自家用電気工作物』は自主保安が義務付けられています。
この場合マンション管理組合は、電気主任技術者を選任し、電気設備の予防保全を行うため点検計画などを定めた保安規程を作成し、経済産業省に提出しなければなりません。
さらに毎年1回、設備を停電して精密検査・測定、また毎月1回外観点検などを実施し、報告することになります。
但し、有資格者の居るマンションはまれでしょうから、実際には保安管理業務を委託することになります(作成・届出から点検・報告まで)。
電力会社から低圧で受電する場合に、引込点の最初に設置する盤。開閉器や電力量計(WHM)を収容し、この盤内を電力会社との責任分界点とすることが多い。
分岐用の開閉器には配線用遮断器(MCCB)やノントリップ開閉器、漏電遮断器などが用いられる。
電力会社が所有となる電力量計を合わせて収容した「引込計器盤」として運用するのが通常で、検針がしやすい屋外に設置する。
建物外壁や自立柱に設置することが多い。美観上建物外壁に引込線を取り付けたくない場合や、通信線などを合わせて引き込みたい場合は、引込用電柱を建てて引込開閉器盤を固定する。
一般的に、電力会社から電力の供給を受ける部分、受電点に設置される盤は配電盤と呼ばれます。
但し、低圧引込みの場合は、配電盤はなく、分電盤のみとなります。
配電盤から各所必要な場所に幹線が敷設され、幹線の先に分電盤を設置し、照明やコンセント、電動機などに電源を供給します。
分電盤の呼び方として、電灯幹線が接続された分電盤は電灯分電盤(写真左)、動力幹線が接続された分電盤は動力分電盤(写真右)と呼ばれます。
ただし動力負荷に電源を供給する分電盤は、ファンやポンプなどを自動制御するための機器が収容されるため、動力分電盤という呼び方ではなく、動力制御盤と呼ぶこともあります。
分電盤の寿命と耐用年数
分電盤は、内蔵している設備毎に寿命が設定されています。電磁開閉器やコンデンサは約10年、配線用遮断器やスイッチ、継電器類は約15年が耐用年数と言われます。
箱体は設置場所によって違いますが、EPSなどの屋内設置であれば、40年から60年は使用できます。
これは錆や傷が発生した場合、補修するなどして維持管理・保全を十分に行った場合の年数です。
耐用年数の考え方には、物理的劣化だけではなく、性能の陳腐化による社会的劣化も考える必要があります。従来の機器に比べ、著しく機能が上昇する製品が販売されたり、安全性が飛躍的に高まる製品が販売され、既存設備の陳腐化が著しくなった場合でも、機器交換を行うことが望まれます。
住宅用分電盤は、特に住宅用途としての使用を想定して製作された分電盤で、サービスブレーカー、漏電遮断器、分岐遮断器で構成された樹脂製分電盤です。
露出壁付けしても美観上耐えるように作られています。住宅用分電盤は、ホーム分電盤とも呼ばれます。
なお、電力会社との契約により、住宅用分電盤の内部にサービスブレーカーを設置しますが、アンペア数によって色と金額が区分されています。
契約電気容量の引き上げ
契約電気容量を例えば、30Aから50Aなどへ勝ってに引き上げることはできません。
新築の時に、マンション全体で使う電気の容量に合わせて幹線の太さを決めているからです。かつては、20Aという設定もありました。容量を上げるには、マンションの共用部分の電灯幹線を引き込みから太くする必要があります。
電気事業法では、電気保安確保のため、技術基準の遵守義務のほかに、自家用工作物の設置者に対して、電気主任技術者を選任させる義務や電気工作物の工事、維持及び運営に関する保安規定を定めるなどの義務を課しています。
また、住戸及び共用部等の一般電気工作物の維持は、その電気の供給会社(電力会社)が4年に1回調査し、不良箇所があれば、その一般電気工作物の所有者又は専有者に知らせる義務があります。