耐震改修促進法とはどんな法律?

1995年(平成7年)1月17日に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)では6,400人を超える方が犠牲となり、約21万棟の家屋が全半壊しま した。

 

また、亡くなられた人の8割弱が建築物の倒壊等による圧迫死であり、その9割が古い木造住宅であったと報告されています。

 

 


建設省(現国土交通省)の建築震災調査委員会の報告によれば、建築物の被害の傾向をみると現行の新耐震基準(1981年(昭和56年)施行)以前に建築された建築物に被害が多く見られ、一方、それ(1981年(昭和56年))以降に建築された比較的新しい建築物の被害の程度は軽く、現行の新耐震基準は概ね妥当であると考えられています。

 

 

この教訓をもとに1995年(平成7年)12月25日に「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」が施行され、現在の新耐震基準を満たさない建築物について積極的に耐震診断や改修を進めることとされました

特定建築物所有者の努力義務

この耐震改修促進法では、特定建築物の所有者は、建築物が現行の耐震基準と同等以上の耐震性能を確保するよう耐震診断や改修に努めることが求められています。

 

特定建築物とは現行の新耐震基準に適合しない建築物(一般に1981年(昭和56年)5月以前に建築確認を受けたもの)のうち、学校、病院、ホテル、事務所その他多数のものが利用する建物のうち、3階建以上でかつ床面積が1,000㎡以上の建築物をいいます。

 

賃貸マンションは特定建築物に該当しますが、分譲マンションは特定建築物に該当しません。

平成25年改正のポイント

その後、幾度かの改正を経て、

平成25年11月25日に次の2点を大きな改正ポイントとする耐震改修促進法が施工されました。

 

①耐震診断の義務化・診断結果の公表

下記の建築物は耐震診断の実施と診断結果の公表が義務化されました。

 

ア)病院、店舗、旅館等の不特定多数の者が利用する建築物および学校、老人ホーム等の避難弱者が利用する建築物の内大規模なもの

 

イ)都道府県または市町村が指定する緊急輸送道路等の避難路沿道建築物であって一定の高さ以上のもの

この結果、緊急輸送道路に沿道沿いの分譲マンションも対象となる場合があります。

 

ウ)都道府県が指定する防災拠点建築物

 

合わせて、分譲マンションを含む全ての建築物についても、耐震診断及び必要に応じた耐震改修の努力義務が創設されました。

②耐震改修の円滑化のための新制度

ア)耐震改修計画の認定対象となる工事範囲が拡張され、「外付けフレーム工法」などの床の増築を伴う耐震改修工法も認定対象となります。

 

イ)耐震改修により増築され、容積率・建ぺい率制限に適合しなくなる場合に都道府県などの認定があれば、制限を適用しないという特例が適用されます。

 

ウ)都道府県などより、耐震性が確保されている旨の認定を受けた建築物には、「基準適合認定建築物マーク」を表示することができる。

 

エ)分譲マンションにおいて、都道府県などの認定があれば、耐震改修工事により共用部分を変更する場合の決議要件を特別決議(3/4以上)から普通決議(過半数)に緩和することができます。

まずは耐震診断を

阪神・淡路大震災以後も東日本大震災をはじめとして、各地で大地震に見舞われています。

 

いつどこで大地震が発生してもおかしくありません。

南海トラフ地震や首都直下地震など甚大な被害が予想され、その対策が急がれています。

 

分譲マンションは、耐震診断が義務化された特定建築物ではありませんが、昭和56年(1981年)5月以前に建てられた分譲マンションは、耐震診断が必要です。

 

 

 

 

建築物の耐震性能を評価し、耐震改修が必要かどうかを判断するのが耐震診断です。

予備調査(1~2週間)⇒本調査(3~6週間)⇒耐震性能の評価(1~3カ月)の手順で行われ、診断費用は建物の床延べ面積が5,000㎡以上の場合は、約1,100円/㎡程度です。

 

耐震診断及び耐震改修費用には都道府県などに補助制度がある場合があります。

また、日本政策金融公庫による融資制度や都道府県による利子補給などの優遇措置もあります。

 

耐震性能(Is値)が0.6未満であれば、倒壊の恐れがあり耐震改修が必要です。

 

100%の耐震改修でなくとも、耐震補強することで、倒壊などの恐れを大きく軽減することができます