マンション管理適正化法72条の目的は、管理組合がマンション管理業者との管理委託契約締結の意思表示をする前に、マンション管理業者が管理委託契約に係る重要な事項について、あらかじめ書面を交付して説明することによって、管理組合に管理委託契約の範囲や内容等についての検討と理解の機会を確保しようとするものです。
重要事項説明の規定は、マンション管理業者と管理組合の間で発生する紛争の中で、管理委託契約の範囲及び内容に関するものが少なくないこと等があり、こうしたトラブルを未然に防止するためには、管理組合の構成員である区分所有者等が管理委託契約の範囲や内容を事前に十分に理解した上で、契約を締結することが重要であることから設けられたものです。
従って、例えば、管理組合からの契約解除に制限を設けるなど、管理組合が管理委託契約に不当な条項や不意打ち的な条項がないことなどを確認し、契約上の管理組合の権利と義務やマンション管理業者の責任の範囲に関する事項等について、管理委託契約を締結する前に十分に検討した上で、契約が締結できるようにするためのものです。
マンション管理業者は、管理事務の実施についての責任の範囲と管理組合の権利の範囲や限界等については、包み隠さずに開示して説明する必要がある。また、当然のことながら、単に説明するだけでなく、説明した内容に管理組合から質問等を受けた場合には、その質問に応じることにより、初めて説明責任を果たしたと言えることになります。
説明すべき重要事項は次の11項目となっています。
①マンション管理業者の商号又は名称、住所、登録番号及び登録年月日
②管理事務の対象となるマンションの所在地に関する事項
③管理事務の対象となるマンションの部分に関する事項
④管理事務の内容及び実施方法(法76条の規定により管理する財産の管理方法を含む)
⑤管理事務に要する費用並びにその支払いの時期及び方法
⑥管理事務の一部の再委託に関する事項
⑦保証契約に関する事項
(収納口座、保管口座により管理組合の財産の管理を行う場合に、マンション管理業者が倒産した場合に備えて、第三者に財産を保証してもらう契約)
⑧免責に関する事項
⑨契約期間に関する事項
⑩契約の更新に関する事項
⑪契約の解除に関する事項
そして、説明する管理業務主任者がその重要事項説明書に記名押印することになっています。
①マンション管理業者は、管理組合から管理事務の委託を受けることを内容とする契約を締結しようとする時は、あらかじめ説明会を開催し、対象マンションの区分所有者等及び管理者等に対して、管理業務主任者をして、重要事項説明をさせなければなりません。
この場合において、マンション管理業者は、説明会の日の1週間前までに、対象マンションの区分所有者等及び管理者等に対して、重要事項並びに説明会の日時及び場所を記載した書面を交付しなければなりません。
同時に、マンションの掲示板などに説明会の日時・場所について掲示する必要があります。
但し、新たに建設されたマンションの建設工事完了の日から1年を経過するまでの間に契約期間が終了する場合は、重要事項説明会は必要ありません。
②管理業務主任者は、重要事項の説明をする場合には、説明の相手方に「管理業務主任者証」を自ら提示しなければなりません。(提示しないで説明した時は10万円以下の過料に処せられます)
③一般的には、管理受託契約の期間満了時に契約更新するか否かについては、管理組合の総会の決議事項とされています。
従って、管理組合での総会での管理委託契約の更新に関する議案の採決を行う前に、重要事項説明を行っておかなければなりません。
⑤マンション管理業者は、従前の管理受託契約と同一の条件で管理組合との管理委託契約を更新しようとする時は、あらかじめ、対象マンションの区分所有者等全員に対して、重要事項を記載した書面を交付すること。
対象マンションに管理者等が置かれているときは、マンション管理業者は、管理者等に対して、管理業務主任者をして、重要事項について、これを記載した書面を交付して説明を行わせること。
但し、同一条件による契約更新の場合は、区分所有者等に対する説明会を開催することまでは必要としません。
国土交通省の通達では、同一条件として取り扱うことができるケースとして次の5つの場合が例示されています。
①従前の管理委託契約と管理事務の内容及び実施方法を同一とし、管理事務に要する費用の額を減額する場合。
②従前の管理委託契約と管理事務の内容及び実施方法の範囲を拡大し、管理事務に要する費用の額を同一とし又は減額しようとする場合。
③従前に管理委託契約に比して管理事務に要する費用の支払時期を後ろに変更しようとする場合
④従前の管理委託契約に比して更新後の契約期間を短縮しようとする場合
⑤管理事務の対象となるマンションの所在地の名称が変更される場合