管理組合が訴訟を提起するには、様々ケースがあります。区分所有法に基づく訴訟のほか、民法や建築基準法といった法律に基づくケースもあります。
区分所有者及び占有者(賃借人など)は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理または使用に関し、共同の利益に反する行為をしてはならない義務を負っています。(区分所有法6条)
しかし、管理費などを長期にわたって滞納したり、専有部分に危険物を持ち込んだり、異常な騒音・振動を発するような人が現れることがあります。
このような場合、他の区分所有者は、民法上、その義務違反者に対して損害賠償を請求したり、行為の差し止めを請求することができます。
その根拠は、
①不法行為の規定(民法709条) と
②区分所有権及び共用部分の共有持分権に基づく物件的請求権
によるものです。
※不法行為とは・・・故意・過失のある他人の違法な行為
※物権的請求権とは・・・所有権等の権利が侵害された場合に、その侵害の排除を求めることができる権利
一種の共同生活関係が営まれているマンションにおいては、これらの民法上の権利行使のみでは不十分な場合があります。
そこで、区分所有法では、
①義務違反者の行為の差し止め請求(区分所有法57条)
②専有部分の使用禁止の請求(区分所有法58条)
③区分所有権・敷地利用権の競売の請求(区分所有法59条)
④占有者に対する契約解除・引渡請求(区分所有法60条)
の規定を別途定めています。
その他として、例えば、修繕積立金の横領、建物の施工不良などを原因として、管理会社・分譲会社などを訴訟するケースも考えられます。
訴訟の提起は規約または総会の決議事項となります。
総会を事前に召集し、その訴訟内容、理事長などが原告となる旨、弁護士費用の概算を予算化し、承認を受けなければなりません。
●誰が原告となるのか?
管理組合法人又は権利能力なき社団とされる管理組合は、民事訴訟法上の当事者能力があるので、管理組合法人または、管理組合は原告になり被告になることができます。
※権利能力なき社団とされる管理組合とは・・・管理規約が定められて、理事長等の代表者が選出され、その運営方法等が明確となっている法人格のない管理組合のこと。したがって、管理規約が定められていないような場合は、法人格のない管理組合は原告・被告になることができません。
もっとも法人格のない管理組合が訴訟を提起する、あるいは提起される場合について、区分所有法26条4項では、「管理者は、規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告または被告となることができる」と規定しているので、管理者を当事者として訴訟を行うことも可能です。
●法的根拠はあるのか?
「何を根拠とする訴訟なのか?」「根拠となる法律・規約はあるのか?」「どの条文に基づくものなのか?」を明確にする必要があります。
●管理組合の不利益は何か?
相手方の行為により生じる「管理組合の不利益は何か?」、「その不利益は現に生じているのか?」、又は「予測されるのか?」といった点を明確にする
●不利益の度合い?
管理組合が受ける不利益の度合いを客観的に測ることも重要です。
その不利益の度合いが社会通念上、受忍限度を超えるものかどうかを判断する必要があります。
管理組合として、法的措置をとることは、合意形成、費用負担などいろいろな問題があり、そう簡単に踏み切れるものではありません。
例えば、競売請求(区分所有法59条)などは、総会で3/4以上の賛成が必要となります。
マンション管理をめぐるトラブルは、包み隠さずみんなに知らせ、関心をもってもらうことが解決の第一歩になります。
少数の関係者だけ、あるいは理事会と当事者だけの間で処理しようとすうると、むしろこじれて悪化することも少なくありません。
トラブルの性質にもよりますが、日頃から区分所有者に広報し、総会での議案に入れたりしていくことを考えてみましょう。
ガラス張りの中で議論することで解決することは以外に多く、また議論すること自体が抑止効果を生んだりします。