管理組合は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議により、法人格を取得する「ことができます。(区分所有法47条)
管理組合が法人格を取得すると、管理組合名義での銀行口座開設、不動産登記ができるなど、管理組合の財産と構成員の財産の区別が明確になるなどのメリットがあります。
具体的な手続きとしては下記3点の内容の決議を行い、その事務所の所在地において法人設立の登記を行います。
【決議内容】
①法人となる旨
②「○○管理組合法人」という法人としての名称
③事務所
法人登記においては、下記内容を登記します。
①目的及び業務
②名称
③事務所所在地
④代表理事の氏名、住所および資格
⑤共同代表を定めた時はその旨
●法47条5項
法人化前集会の決議、規約および管理者の職務の範囲内の行為は、そのまま管理組合法人につき効力を生じます。
●法47条6項
管理組合法人は、その事務について区分所有者を代理する権限を有します。
また、共用部分等に設定されて損害保険契約に基づく保険金額、共用部分等について生じた損害賠償金および不当利得による返還金の請求・受領についても、同様に代理権を有します。
●法47条7項
この管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者には対抗することができません。
●法47条8項
管理組合法人は、規約または集会の決議により、その事務に関し、区分所有者のために、原告または被告となることができます。
●法47条9項
規約によって管理組合法人に訴訟追行権が与えられていて、現実に管理組合法人が原告または被告になったときは、遅滞なく、区分所有者に通知しなければなりません。
●法47条10項
管理組合法人は、理事その他の代理人がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負います。
管理組合法人は、管理組合法人を設立した時および毎年一定の時期に財産目録を作り、これを常に事務所に備え置かなければなりません。
また、管理組合法人は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるたびに、この名簿を訂正しなければなりません。(法48条の2)
管理組合法人には必ず理事を置かなければなりません。(法49条1項)
理事は管理組合法人を代表するとともに、その業務を執行する権限と責任を有します。(法49条3項)
理事の員数に制限はなく、複数の理事を置くこともできます。(法49条4項)
また、規約で制限されていない限り、区分所有者以外の者を理事とすることもできます。
理事の任期は原則として2年ですが、3年以内の範囲であれば、規約で別段の定め(任期1年、任期3年など)をすることもできます。
理事の選任・解任は、規約に別段の定めがない限り、集会の普通決議によって行います。(法49条8項)
理事に不正な行為その他職務を行うに適さない事情がある時は、各区分所有者は裁判所にその解任を請求することができます。(法25条)
理事は管理組合法人を代表する権限を有します。(法49条3項)
「代表」とは、理事の行為そのものが法人の行為とみられ、理事の行為の効果がすべて法人に及ぶことを意味します。
代表権の範囲は、規約または集会の決議により制限されている場合および管理組合法人と理事の利益は相反する場合を除いて、管理組合法人の一切の事務に及びます。
理事が複数ある場合は、各自管理組合法人を代表するのが原則ですが、規約または集会の決議によって、管理組合法人を代表する理事を定めたり、共同代表性をとることも認められています。(法49条4項)
また、規約で、代表理事は理事の互選によって定める旨を規定することもできます。(法49条5項)
理事の代表権(代理権)に加えた制限は、この制限を知らない(善意の)第三者には対抗できません
(法49条の2)
理事が複数人ある場合の事務の決定は、規約に別段の定めがないときは、理事の過半数で決することになります。(法49条2項)
理事は、規約または集会の決議によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができます。(法49条の3)
他人に委任することができるのは「特定の行為」に限られるので、理事の有する代表権を包括的に委任することはできません。
管理組合法人には、理事のほか、監事も必ず置く必要があります。(法50条1項)
監事の選任・解任、任期については理事とまったく同様です。
監事の員数についても制限はありません。
監事は、理事や管理組合法人の使用人を兼ねることはできません。(法50条2項)
監事の職務は下記4点です。(法50条3項)
①管理組合法人の財産状況の監査
②理事の業務執行状況の監査
③財産状況または業務執行につき、法令・規約違反または著しく不当な事項を発見したときの集会での報告
④上記③の報告をするために必要あるときは集会を召集する
また、管理組合法人と理事の利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する権限があります。(法51条)
管理組合法人の事務は、区分所有法に定めるものほか、すべて集会の決議によって行うのが原則です。
しかし、すべての行為について集会決議を得ることは不便なので、特別決議事項及び区分所有者の共同の利益に反する行為の差し止め訴訟の提起以外の行為については、規約で理事その他の役員に決定を委任することができます(法52条1項)
管理組合法人は、次の場合に限り解散します。
①建物の全部が滅失した場合
②建物に専有部分がなくなった場合
③集会で解散の特別決議が行われた場合
管理組合法人が解散したときは、清算手続を行います。
建物全部の滅失または専有部分がなくなったことにより解散した場合、管理組合法人の残余財産は、規約に別段の定めがあるときを除いて、共有部分の持分の割合により各区分所有者に帰属することになります。
集会の決議によって法人を解散した場合、管理組合自体は存続するので、残余財産は、法人でなくなった管理組合に帰属します。