マンションにおける床防水とは、主にバルコニーや共用開放廊下、外部階段など、雨のかかる部位が対象となります。
コンクリートの軽微なひび割れ等から漏水した場合でも居室内への被害に繋がる恐れが少ないことから、上記の部位に防水処理を施していない新築マンションもかつては多く存在しました。
しかし、最近ではコンクリートの保護や美観性、また、防滑性を考慮して、防水剤が施されている新築マンションが多く占めるようになりました。
■ウレタン塗膜防水と塩ビシート
一般的にマンションの床防水として多く用いられているのは、複雑な形状にも対応可能な「ウレタン塗膜防水」と防滑性と美観性に優れた「塩ビシート」です。
排水溝と外壁の取り合い部分に「ウレタン塗膜防水」を施し、歩行面等の平らな部分に「塩ビシート」を貼る工法は、新築工事のみならず改修工事でも一般的に採用されています。
■工事実施時期の検討
既存の床防水材が劣化している場合、あるいは、新築時に防水材が施されていない場合には、1回目の大規模修繕工事の際に改修を行うケースが多い部位です。
なおバルコニー内の工事の際には、外壁面に架けられた足場から作業員が出入りすることが現実的であり、大規模修繕工事の際に優先すべき防水工事の部位となります。
一方、共用廊下や外部階段等は、仮設足場が無くても作業できることから、劣化の程度と工事費用を考慮して、先延ばしすることも可能でしょう。
■勾配不良の問題
床防水工事の際、多くのマンションで悩ましい問題となるのが、水溜りや勾配不良です。
バルコニーや廊下の床面は、概ね1/100から1/75程度の勾配が確保されていますが、水がスムーズに流れるには1/50以上の勾配が必要です。(表面の材質によります)排水溝部分も同じで、溝の一番高いところから、排水口(雨樋)までの距離が5メートルである場合、高低差を10センチメートル以上確保することが必要となり、水溜りを完全になくすのは困難といえます。