タイル仕上げの劣化は、建築物の機能を低下させたり、美観を損ねるだけでなく、はく落により通行人などへの第三者傷害を発生させる恐れがあります。
そのため、予防保全のための定期的な点検、調査、診断を行い、劣化現象を早期に発見する必要があります。
なお、セメント・モルタル仕上げにおいては、タイル仕上げと同様の浮き、はく落に関する調査が行う必要があります。
外観目視調査は、最も基本的な調査として、日常的な点検や予備調査としての性格の一次診断です。
肉眼、双眼鏡、望遠鏡、トランジット(※)を使用して、外壁の劣化を調査します。
※トランジット・・・角度を計測する測量機器の一つ
劣化現象 | 外観調査のポイント |
浮き・ふくれ | 大面積が浮きが発生すると、ふくれやせり上がりが生じる |
汚れ |
汚れ付着が表面的なものか、 タイル又はモルタルの裏面に水がまわったために生じたものかを判断する |
水濡れ |
水が裏面にまわり、目地部などがぬれ色をしている箇所は、 浮きが生じている可能性がある |
錆び水の付着 |
開口部鋼製建具の発錆、広告塔及び看板塔の足元埋込金物の発錆等は その周辺のタイル又はモルタルの浮きの原因となりやすく、 タイル又はモルタルの表面に鉄錆が付着している場合は注意する。 ひび割れから出ている錆び水は鉄筋の腐食に起因している可能性が高いため要注意 |
エフロレッセンス |
タイル張り層又はモルタル塗装裏面に水が回っている。 すなわち、浮きが生じていいる可能性が高い |
ひび割れ | ひび割れ周囲は浮きを作っていることがあるため、注意する |
ひび割れの調査は目視で行い、幅と長さを測定する
ひび割れ幅はクラックスケール又はルーペにより測定する
ひび割れ周囲は打診法によりはく離の有無を測定する
●打診法
熟練者がテストハンマー(※)などを用いて打診し、空洞音をとらえることにより浮きを検知する方法であり、目的により部分打診を行う場合と全面打診を行う場合がある。
【外壁の全面打診調査の実施(国土交通省告示)】
建物が竣工してから10年を超えているものについて
1.外壁改修工事を10年を超えて行っていない場合
2.歩行者等に危害が加わる恐れのある部分の外壁全面打診調査を10年を超えておこなっていない場合
上記1.2.に該当する場合は、3年以内に外壁の全面打診調査を行う必要があります。
但し、次のいずれかの場合は除外されます。
1.3年以内に外壁の改修工事を実施することが確実な場合
2.歩行者等の安全を確保するための対策を講じられている場合
●赤外線装置法
タイルやモルタルの浮き部と健全部の熱伝導の違いにより表面温度差を赤外線装置により測定し、浮きの有無や程度を調査する方法です。
赤外線装置は、赤外線カメラ、コントローラー、TVモニター、記録装置で構成されてます。
●反発法
シュミットハンマー等を用いてタイル面に一定の衝撃を与て、その衝撃により生じた跳ね返りの大きさを自動的に記録し、反発度又は音圧の違いによってタイル等の浮きの有無や程度を調査する方法です。
仕上材の健全度を調査するため、必要に応じて接着強度の測定を行う。