コンクリートの凍害とは、コンクリートの細孔中に含まれる水分が凍結し、水から氷へ変化するときの膨張圧、水分の移動圧などによってコンクリートが破壊される現象をいい、凍害の基本的な機構である膨張によるコンクリート組織の劣化のほか、スケーリング(表面層のはく離)、ポップアウト等の劣化形態があります。
一次診断では、ひび割れなどの発生形態から凍害の可能性が考えられる場合に二次および三次診断を行う。
なお凍害は地理的環境により影響が大きいため、地域的な凍害の危険性を考慮することが大事です。
■調査箇所
含水量が多く、気温変化に左右されやすい建物部位(軒先、バルコニー等のト突出部、外壁の隅角部、開口部周り、パラペットまわり、床の防水層押え面、屋外階段など)を重点的に目視調査を行い、凍害によると思われるひび割れ、スケーリング(表面が薄片状にはく離・はく落する現象)、ポップアウト(表層化の骨材粒子等の膨張による破壊でできた表面の円錐状のはく離)の有無を確認する。
■調査方法
二次診断では、目視および非破壊法を中心に劣化の状況、程度を調査し凍結の劣化度を判定する
調査項目 | 調査内容 |
ひび割れ | ひび割れパターン、ひび割れ幅・長さ・個数 |
スケーリング | スケーリングの面積と深さ |
浮き、はく離、はく落 | 浮き、はく離、はく落の面積と深さ |
強度 | ハンマーによる反発硬度、打音、引っかき傷幅 |
凍結部分の深さ | はつりによる劣化深さ |
鉄筋の腐食 | 腐食面積 |
調査項目 | 調査内容 |
ひび割れ | ひび割れの深さ |
表面層の脆弱度 | はつりによる脆弱層の除去、表面付着力、コアを用いた針貫入試験、コアドリル送り速度による劣化深さ試験 |
強度劣化 | コア採取による圧縮強度、静弾性係数 |
鉄筋の腐食 | 鉄筋の腐食面積、断面欠損量 |
調合 | コアの分析 |
気泡間隔係数、空気量 | コア断面を顕微鏡測定 |
細孔構造 | 試料を水銀圧入法により測定 |
凍結融解抵抗性 | コアの凍結融解試験 |
劣化度 | 区分の基準 |
Ⅰ (ほとんどなし) |
軽微なひび割れ(幅0.2mm以下)、又は表面のみスケーリング(ピーリング)で進行性はなし |
Ⅱ (軽度) |
表面に小さなひび割れ(幅0.3mm位まで)、ポップアウト、又は中程度までのスケーリング(深さ10mm位まで) |
Ⅲ (中度) |
ひび割れ幅が大きい(幅0.3mm以上)、又は強度のスケーリング、脆弱化、はく離がある、深さ20mm位までの劣化 |
Ⅳ (やや重度) |
鉄筋付近までのひび割れ、浮き、はく離、脆弱化が激しいスケーリング、深さ20mm位までの劣化 |
Ⅴ (重度) |
コンクリートが浮き上がり、はく落も著しい、脆弱部も深い(30mm以上)鉄筋も断面欠損している |
二次診断の調査結果から、凍害を受けている局所的な劣化の程度は、五つの劣化度に区分できる。
この区分で劣化度Ⅲ以上と評価された場合は、必要に応じて三次診断を実施する。