鉄筋のかぶり厚さの確保は、コンクリート構造物の耐久性、耐火性確保のために非常に重要な項目である。
特にコンクリートの中性化や飛来塩分による鉄筋腐食などの劣化現象と深く関係しており、これらの劣化要因調査の一環として測定を行う。
■調査箇所
●中性化深さ、塩化物量の測定を行った位置および可能な場合には鉄筋に沿ったひび割れ、さび汚れなどの劣化が確認された部位
●下記に示す部位は特にかぶり厚さの確保が困難な部位であるため、劣化が確認されていない場合についても代表的な箇所を選定してできるだけ調査を行う。
・開口部周辺
・壁と床スラブの取り合い部分
・庇、パラペット等の突出部分
・床スラブ、屋根スラブの下端筋
●中性化、飛来塩分による劣化の予測を行う場合には、一般外壁についてできるだけ広範囲に調査を行う。
■調査方法
原則として、非破壊検査を用いる
・電磁レーダー法
・電磁誘導法
ただし、鉄筋の腐食などの調査において、はつり調査を行う場合については、実測によりかぶり厚さを測定する
■鉄筋のかぶり厚さの評価
調査結果は、鉄筋腐食、塩化物イオン量など、たの要因と組み合わせて評価を行う。
ただし、かぶり厚さの不足は、劣化の問題ではなく、建物が初期状態に保有すべき耐久性を左右する要因であり、初期性能を把握するための重要な要素です。
鉄筋の腐食度調査は、建物資料調査および外観目視調査による劣化症状の観察により、鉄筋腐食の可能性があると判断された場合に実施する。
■調査箇所
調査部位としては、駐車場、ロビー、廊下、階段室、その他の設備室などの共用部分とする。診断部位の選定にあたっては、自然電位、分極抵抗測定など微破壊(鉄筋を露出)を行っても支障のない部位・箇所から、「劣化部と健全部」、「屋内と屋外」「海側と山側」などの環境要因による対比を考慮の上、選定する。
■調査方法
●電気化学的特性値測定方法
金属の腐食するプロセスは電気化学反応であるが、その反応中で指標となる二つの特性値(自然電位、分極抵抗)を測定、分析することで、腐食状態や進行速度を推定することができる。
実際の調査では、自然電位測定値に基づく評価を確認するために、鉄筋腐食の可能性の高い部分や、逆に健全な状態と推定される部分のはつり調査を併用して、目視で確認した評価と合わせて判断することが望ましいとされいます。
●はつり調査
はつり調査を行う場合は、下記項目についても同時に把握することができる。
・仕上材の施工状況(種類、厚さなど)
・仕上材の劣化状況(脆弱化、浮き、はく落など)
・コンクリートの施工状況
・コンクリートの劣化状況
・鉄筋の種類と径ならびに配筋状況
・かぶり厚さ
・鉄筋の腐食状況
・中性化深さ
・塩化物の存在
グレード | 評価基準 |
Ⅰ | 腐食がない状態。または、わずかに点錆が生じている状態 |
Ⅱ | 表面に点錆が広がっている状態 |
Ⅲ | 点錆が広がって、面錆となり、部分的に浮き錆が生じている状態 |
Ⅳ |
浮き錆が広がって生じ、コンクリートに錆が付着し、断面積で20%以下の欠損が 生じている箇所がある状態 |
Ⅴ |
厚い層状の錆が広がって生じ、断面積で20%を超える著しい欠損を 生じている箇所がある状態 |