管理会社が管理者となること

管理会社が管理者となる第三者管理者方式は良いことなのでしょうか?それとも問題があるのでしょうか?

 

理事会なし分譲マンション増加中

管理会社が管理者となる方式は、大和ライフネクストだけでなく、三井不動産や住友不動産が新規分譲マンションに試験導入しているほか、長谷工コミュニティでも20件近くの物件で導入済みで、本格展開を開始しています。

 

合人社計画研究所では、グループで管理業務を受託している約5000の管理組合のうち、すでに2割を第三者管理方式に切り替えているそうです。

 

共働き世帯が一般的になるなか、休日が活動の中心となる理事会業務を負担に感じる人は多く、マンションデベロッパーにとって、「理事にならなくてよい」というのが売り文句の一つになっているようです。

 

既存物件でも、理事会役員のなり手不足、特に理事長になってくれる人がいないと言う問題は深刻です。

 

なんとか、輪番制で理事会役員を確保できたとしても、理事会へ出席する理事が少なく、理事会が成立しない管理組合も多いようです。

 

このような背景もあり、理事会そのものをなくして、管理会社が管理者となり、管理組合運営を取り仕切り、組合員の負担を軽減(無くす)方式が増加しつつあります。

 

第三者に理事会業務を委託することに82%が賛成

大和ライフネクストによるアンケート調査では、

管理組合役員(理事)になることは負担だと思いますか?との問に対して92%が負担を感じると回答しました。

 

その理由は「煩わしい、面倒くさい」が最も多い回答でした。さらに

 

総会で理事会を廃止し、第三者(管理会社やその関連会社)に理事会業務を委託する議案が上程されたら?

 

という問に対して82%が賛成するとの回答でした。

でも、本当にそれでいいの?

理事会をなくし、管理会社が管理者となり管理組合を運営する。

組合員は理事長や役員業務から解放され、理事会への出席も必要なくなります。

 

でも、本当にそれでいいのでしょうか?

 

もともと、管理組合運営に関心もなく、理事会出席もままならず、管理会社に丸投げ状態に近い管理組合運営でした。

 

ますます、その傾向が強くなり、管理会社の言いなり、やりたい放題になるのでは無いでしょうか?

 

管理会社に対する監視の場は、総会だけとなります。

 

理事会があったときでさえ、管理会社の提案内容がほぼ100%そのまま総会に上程され、承認されていたのですから、総会で管理会社の提案内容をチェックするのは、困難です。

 

不必要であったり、過剰仕様の建物設備の修繕工事や割高な修繕工事議案が総会に上程されていても、その内容をチェックするのは、不可能です。

 

利益相反関係

管理組合と管理会社は「利益相反取引関係」にあります。

 

管理会社は管理業務サービスを高く売って利益を出したい。管理組合は管理業務サービスを安く買って、無駄な支出を少なくしたい。

 

 

国土交通省作成の「外部専門家の活用ガイドライン」にも、外部管理者と管理組合の利益相反取引に該当するものとして、管理者が特別な利害関係を有する業者に工事・物品等を発注内容に相応しない価格で発注する、発注先からリベートを収受する取引などが挙げられています。

 

これらのリスクへの対応策として工事などの発注のプロセスにおいて、一定額以上の案件に関しては、総会・理事会の決議を必要とする。

 

発注先選定に際しては、公募し、複数から見積を取得する。

 

など透明性を確保する仕組みを準備する必要があるとされています。

情報の非対称

売り手は専門家で色々な情報を知っている。買い手は専門家でなく情報が少ない関係のことを言います。

 

管理会社は専門家で、価格相場もよくしっています。一方管理組合は素人でいろいろな価格相場を調べる時間もありません。

一般商品やサービスであれば、買い手は、様々なルートを通して、簡単に比較選択できますが、管理会社から購入する商品・サービスはそうもいきません。

 

長く、取引中の管理会社からしか商品・サービスを買ったことがないのですから・・・このような状況では情報量の多い方が圧倒的に有利です。

管理会社が管理者となることのリスク

管理会社も営利企業ですから、売上利益をより多く確保しようとするのは、当然です。

また管理会社にとって、最も大きい売上利益は、大規模修繕工事を始めとした、修繕工事の売上利益です。

 

そこを適正妥当なものかチェックし是正するのが理事会の本来の役目の一つです。

 

ですが、現実は理事会があっても、形骸化し、管理会社に丸投げ状態に近いのが現実でもあります。

 

ただし、知識も経験もなく、なにより仕事もあり、時間がとれない中、このような状態になるのは、致し方ないところでもあります。

 

管理会社へ丸投げ状態の管理組合が、第三者管理者業務まで管理会社に委託するのは、大変危険です。

 

それでは、どうすれば良いのでしょうか?

 

国土交通省が作成した「外部専門家の活用ガイドライン」にも管理会社が自ら管理者に就任する場合を想定していません。

 

マンション管理士や弁護士などが外部専門家となる場合のガイドラインとなっています。

 

理事会は残して、マンション管理士が管理者となる

知識も経験もあるマンション管理士が管理者となり、管理組合側の立場に立って、管理会社に業務実行の指示をして、業務内容をチェックしていく。

 

このような第三者管理方式が必要となってきます。

 

 

理事会はなくなりません。理事会はマンション管理士から報告提案を受け、マンション管理士が管理者として業務を適切に実行しているかチェックします。