建物の不具合や欠陥はいろいろなケースがあります。同じように見えても程度や原因は様々で深刻さも異なります。主なケースとその原因を整理してみました。
マンションの外壁や床、柱、梁などにコンクリートのひび割れが見つかることはどのマンションでも多かれ少なかれ発生している。
ひび割れの原因には、「乾燥収縮によるもの」「コンクリート内部の膨張によるもの」「地震の大きな揺れによるもの」などがあります。
コンクリートが乾燥する際にできる「乾燥収縮ひび割れ」は最もよく見られるもので、幅は0.3ミリ以下がほとんどで「ヘアクラック」とも呼ばれます。
乾燥収縮ひび割れは構造上問題はないが、雨水が浸透するとコンクリートの中性化が早まる可能性があるので適宜、補修しておくのが良いといわれています。
コンクリートの打設に問題があった場合も、ひび割れが発生する。例えば内部の鉄筋に沿って発生する「沈みひび割れ」は、打設時のコンクリートの締め固め不十分なため、コンクリートが沈下して発生する。
コンクリートのひび割れで一番重要なポイントは、ひび割れの幅が0.3ミリを超え、さらに裏側まで貫通しているようなひび割れは、建物の強度や耐震性に影響しかねない。
そうしたひび割れは設計や施工になんらかのミスや欠陥があった可能性が高い。例えば設計時にコンクリートに対する鉄筋の量が少なかったり、施工の際に鉄筋の入れ方を間違ったり、入れ忘れたりしているのかもしれない。
大きな問題がありそうなケースでは、売主の不動産会社や建設会社に任せておくだけでは不安が残る。
第三者の一級建築士など、別の専門家に調査を依頼することを検討したい。
タイルは本来、耐久性が高く、見た目に高級感があり、外壁の仕上げ材として優れています。
コンクリートの躯体とはモルタルで接着するが、接着力は年数がたつほど高まると言われています。
ところが、何らかの原因でタイルとモルタル、あるいはモルタルとコンクリートの躯体との間に隙間が生じ、タイルが浮いてくるのです。
浮いた状態を放っておくとタイルが落下して通行人に怪我を負わせるなどの危険があります。またコンクリートの躯体に雨などが入り込みやすくなり、マンションの寿命に影響します。
最近、タイルの浮きが増えていますが、それにはタイル張り工法の変化があると言われています。
最近は、コスト削減のため、コンクリートの躯体にモルタルの変わりに、薄く圧着セメントを塗ってタイルを張るようになっています。
圧着セメントがきちんと塗られていないと接着力が不十分となり、圧着セメントとタイルの間に隙間がでて浮きが発生します。
また、コンクリートの躯体は木製や金属製の型枠を組んで、そこにコンクリートを流し込んで造ります。
コンクリートが固まったらこれらの型枠を外しますが、その際、外しやすくするために型枠の表面に剥離剤を塗っています。
タイルを張る前には、コンクリートの壁に残った剥離剤をきちんと拭き取らないといけないのだが、工期が遅れていたりすると、拭き取りが不十分なまま圧着セメントを塗ってしまう。
この場合、コンクリートの躯体と圧着セメントの間に隙間ができてしまい、浮きが発生してしまいます。
構造躯体のコンクリートに水が侵入し、コンクリートの中に含まれる炭酸カルシウムが流出して、白い結晶状の物質が外壁のタイルなどに付着する現象です。
コンクリートのどこかに水が染み込んでいる証拠です。
ひび割れから雨水が染み込んでいるほか、コンクリートの中を通している給排水管や雨どいから漏水している可能性もあります。
構造上すぐに影響があるということではありませんが、コンクリートの劣化を早めるため、どこから水が浸入しているかを調べ、根本原因から解消することが必要です。
マンションの屋上やバルコニーは、防水処理が非常に重要です。しかし、設計や施工が適切に行われていないと、雨漏りなどの不具合が起こります。
例えばアスファルトシートの端部の処理が悪いとそこから雨が入り込んでしまう。
屋根に降った雨を排出するための排水ドレンの数や排水量が足りないと大雨が続いた場合には、雨水が溢れて漏水につながるケースもあります。
耐震スリットとは、柱や梁など建物全体を支える重要な構造躯体と、それ以外の非耐力壁や雑壁と呼ばれる壁を分離するために設けた一種の切れ目のこと。
大地震の再、構造躯体の柱や梁と非耐力壁が一体となっていると、柱や梁に余分な力がかかり、壊れやすくなる。それを防ぐために設けられたもの。
耐震スリットの部分は、コンクリート工事で型枠を組む際、柱や梁と非耐力壁の鉄筋を繋がず、厚さ3センチ程度の発砲樹脂の板などを入れておく。そこにコンクリートを流し込んで、固まった後は樹脂系のシーリングなどで表面を仕上げる。
ところが、設計では耐震スリットを設けることになっているのに入れ忘れたり、コンクリートを流し込む際に、発砲樹脂の板がずれてしまうというケースが意外と多い。
耐震スリットの不具合は表からはほとんど分からない。
ただ、設計図書を基に耐震スリットがある位置に千枚通しなどで刺してみて、奥まで入らなければ(コンクリートに当たるため)不良の疑いがあることになります。
鉄筋コンクリートの建物は、鉄筋とコンクリートの組み合わせによって強度を確保しています。それなのに、後から鉄筋を切断してしまう施工ミスが繰り返し発生しています。
あるマンションでは、工事が終わる間際になって、各住戸の配管を通すスリーブ(穴)の多くを壁や梁に設けていないことが発覚し、設備工事の担当者がコア抜き(コンクリートの壁や梁に穴をあける)をしたため、多くの鉄筋を切断してしまい、このマンションは結局、建て替えるこになりました。
本来、配管などを通すためのスリープ(穴)を設ける箇所には、コンクリートを流し込む前に筒状の部材を鉄筋の間に設置しておく。さらにスリーブの周辺には構造的に弱くならないように鉄筋を補強しておくものです。
コンクリートの壁や梁にスリーブが開いている箇所をのぞいてみて、途中にさびた鉄筋の断面が見えたら不適切なコア抜きの可能性が非常に高いです。
マンションには、あちこちに鉄が使われています。
鉄はそもそも錆びやすく、そのため予め塗装をし、定期的に塗装のし直しを行う必要があります。
ところが、以外に見えない部分の塗装のし忘れがあります。塗装がなされていないところはすぐに錆びてしまいます。
鉄部の塗装は、錆止めのための下地処理が大変重要で、さび落としを含めた下地処理がきちんとされていないと表面だけぬってもすぐ錆が発生してしまいます。
壁と窓の隙間や目地を埋めているのがシーリングです。
雨水の侵入を防ぐ重要な部位であり、シーリングの不良は雨漏りに直結しかねない。
施工直後に多いのが、表面は固まっているのに中が軟らかいままという硬貨不良です。
シーリングは施工の際、主剤と硬化剤をミキサーで攪拌して打設するが、攪拌時間が短かったり、混ぜ合わせる材料の比率などを間違えたりすることで硬化不良が起こります。
硬化不良のシーリングは何年たっても固まらず、想定した性能が出ません。
シーリングはまた、年数がたつと太陽の紫外線や雨、温度差などによって材質が劣化し、ひび割れてきます。
壁のクロスの亀裂やゆがみのうち、石膏ボードの継ぎ目や窓など開口部の周りに起こるものは基本的に下地の問題であり、さほど深刻な問題ではありません。
ただ、コンクリートの壁などに直接張ってある場合の亀裂やゆがみは、コンクリートのひび割れなどの影響と考えられ、構造上の問題につながる可能性もあり、専門家による詳しい調査が必要です。