管理組合会計の見直しはこうする!


修繕積立金を値上げするその前に…

1回目の大規模修繕工事をようやく終えたあるマンションの理事会でのこと

 

管理会社「先日、ご依頼のありました長期修繕計画の見直しができあがりました」

 

理事長「どれどれ、ふーん。建物だけでなく、エレベーターや機械式駐車場、給排水システムなど設備系の修繕にも結構お金がかかるんですね」

 

管理会社「ええそうなんです。大規模修繕工事も1回目より2回目、2回目より3回目と築年数が進めば、進むほど修繕範囲が広がりますので必要費用は増えていきます」

 

理事長「そうすると、修繕積立金も値上する必要があるってこと?」

 

管理会社「そうなんです。段階的に改訂するケースでは、現在150円/㎡のものを今年中に230円/㎡に最終的には、360円/㎡に値上げする必要があるんです。理事長…」

 

理事長「最初は、40円/㎡ものが、90円/㎡、150円/㎡と、すでに2回も値上しているのに、それが230円/㎡、360円/㎡なんて、むちゃくちゃやな。年金生活の人も増えているのにそんな高い修繕積立金払えない人が続出するで!」

 

管理会社「お話しはわかるのですが、エレベーターや機械式駐車場が動かなくなれば、生活そのものができなくなりますから…」

 

見直しステップ①(管理費会計と修繕積立金会計)

一般的に管理組合は、2つの財布を持っています。

 

一つは、管理費会計(一般会計)と言って、管理会社へ支払う管理委託費や共用部の電気代・水道代などの水光熱費、切れた電球の交換、割れたガラスの交換などの小規模修繕費に使われます。

 

収入源は、毎月納める管理費と駐車場使用料などの各種使用料となります。

 

もう一つは、修繕積立金会計と言って、12年~15年毎に行われる大規模修繕工事や築30年~40年頃に行われる給排水管、エレベーターや機械式駐車場の更新などに使われます。

 

収入源は、毎月納める修繕積立金や新規分譲時に収めた修繕積立基金などです。

 

まずは、管理費会計と修繕積立金会計の2つがあることを理解して下さい。

 

ステップ見直し②(管理費会計の中身をよく把握する)

一般的に新規分譲時に設定されている修繕積立金は低額に設定されています。

 

これは、売り易くするためです。

 

購入する側からすれば、ローン返済を含めて毎月の住宅関連経費は少ない方が購入しやすくなります。

 

ですから、当面使う必要のない修繕積立金は低額に設定して、販売されます。

 

管理費は、分譲後に管理業務を受託する系列子会社の管理会社の収入源となるため、修繕積立金よりは、高めに設定されています。

 

さらに注意が必要なのは、駐車場使用料などの各種使用料が管理費会計に組み入れて予算作成されていることです。

 

つまり、管理費会計の予算額は「管理費 + 駐車場使用料などの各種使用料」となっていることです。

 

駐車場使用料などの各種使用料の管理費会計への組み入れ比率は、管理組合ごとに異なりますが、多くの管理組合では全額を組み入れています。

 

組み入れ額は、駐車場契約台数や契約月額料金によって異なりますが、年間で数百万円から数千万円となります。

 

管理費会計予算における構成比率では、毎月納める管理費は50%未満で、駐車場使用料などが50%以上となる管理組合も多くあります。

 

ここで、問題となるのが、管理費会計予算の50%以上が駐車場使用料などで賄われており、それは、年間で数百万から数千万円にのぼり、その分余裕が生まれます。

 

毎月納める管理費だけでは、できないことも、駐車場使用料などを使うことで、できてしまう。

 

厳しくあるべき、予算チェックなどが行われず、管理業務が遂行されてしまいます。

 

また機械式駐車場などは、いずれ更新(取替)する必要が生じますが、その必要金額は数千万円から数億円と言われています。

本来は、将来の機械式駐車場の更新費用のために、修繕積立金会計に積み立てて置くべきものです。

 

つぎに、一般会計に駐車場使用料などが、どの程度組み入れてあるのか中身を把握して下さい。

 

 

見直しステップ③(駐車場使用料の一部を修繕積立金会計に組み入れる)

本来は、駐車場使用料などの全額を修繕積立金会計に組み入れたいのですが、いきなりそうすることも非現実的ですので、最初の一歩としては、半額程度を組み入れる方針を決定します。

 

そうすると、当然今までの管理費会計予算額では、予算不足となりますので、管理費会計予算項目の見直しを行います。

 

一つは、各予算項目の必要性を検討します。どうしても必要なのか?代替策はないのか?


また、項目内容の仕様を見直すことは、出来ないか?例えば、日常清掃業務と管理員業務を別人で行っている場合、管理員が日常清掃を兼務することは、出来ないのか?


建物設備の外観点検の実施回数を年6回から年4回に減らせないのか?など


もう一つは、各項目業務をより安く行うことはできないのか?

 

管理会社等との価格交渉を行うことになります。

 

見直しステップ④(管理会社等との価格交渉)

管理会社等との価格交渉を行うに際して、「とにかく安くして」とか、「総額で5%安くして」などとの交渉スタイルは、あまり良くありません。

 

管理委託作業項目毎に具体的な目標価格を管理組合として設定して交渉に当たります。

 

そのためには、市場における相場情報が必要となりますので、参考価格を取得する意味で、他の管理会社複数に見積依頼をかけてみます。

 

その場合には、管理委託作業項目毎に管理仕様を明確にするため、現状仕様を把握しておきます。

 

例えば、定期清掃は年何回行い、どのような作業内容とするか?など

 

上記の管理仕様を提示して、複数の管理会社より見積提示を受けます。


また、ネットや書籍からも参考情報を取得できます。

 

これを基に、管理組合としての目標価格を設定して、現行の管理会社等と項目毎に具体的に交渉します。

 

この時、場合によっては現状管理仕様を変更することも検討してみます。

見直しステップ⑤(管理費の値上げ)

価格交渉の結果、駐車場使用料の積立金会計に組み入れた全額を賄えないこともあると思います。

 

この場合、不足する金額は管理費を値上げすることとし、総会に議案上程し、承認を得ます。

 

修繕積立金の値上げでなく、管理費を値上げする意味は、毎年使われ無くなる管理費会計予算に対して、組合員及び理事会役員によるチェックを厳しくすることににあります。

 

修繕積立金の場合は、使われる場面は、数年に一度、十数年に一度の頻度となるので、そのタイミングで厳しくチェックします。

 

むしろ修繕積立金は低めに設定されており、また長期修繕計画も甘く設定されている傾向があり、大幅に不足しがちです。

 

見直しステップ⑥(毎年管理費会計予算をチェックする)

管理費会計予算は、毎年、実績を確認し、さらに減額する要素はないか検討し、駐車場使用料の修繕積立金会計への繰入額の増額を検討します。

 

見直しステップ⑦(長期修繕計画の作成)

おおよそ5年毎に長期修繕計画を見直し、修繕積立金会計の必要額を算定し直します。

 

はじめの一歩

まずは、駐車場使用料などの各種使用料が管理費会計の収入項目となっているのか、否か?

 

そして、収入項目となっているとしたら、各種使用料のどれほどを振り向けているのか?

また、管理費会計の何パーセントを占めているのか確認してみてください。