【理事長】保険の更新が必要で、管理会社が見積を持って来たんだが、保険料がもの凄く高くなっているんだ。補償内容は同じなのに70万円も値上がりしてるんだ。
【管理士】確かに、築年数とともに保険料は上がる傾向にあります。特に築25年、30年、35年と高経年になるほど値上がり率が高まる傾向にあります。保険会社の中には、高経年のマンションの新規契約の保険は引き受けない場合もあるようです。
【管理士】2021年1月には、保険料率そのものが平均4.9%値上げされます。
【理事長】2019年にも確か値上げがあったけど、2021年も値上がりするの?
【管理士】マンション向け火災保険は、マンションの規模・補償内容にもよりますが、保険料は、5年契約で数百万円~数千万円にもなる大変大きな買い物となりますから、単純に契約を延長更新するのはよくありません。よく検討する必要があります。
大手損害保険会社のマンション総合保険は、ここ数年
①築年数別保険料体系の導入
②築年数による保険料・免責金額の引き上げ
③一定年数以上の新規引き受けをしない
など高経年のマンションにとって非常に厳しい改定が続いています。
背景としては、高経年のマンションほど水漏れ事故などの保険事故発生が多くなり、保険金支払額が増加するという実態があるからのようです。
保険料のピークは築30年で、それ以上は一定のようです。
下記条件で保険料を算定して大手損害保険会社の保険料を比較してみました。
①所在地東京都
②戸数70戸
③延べ床面積5,000㎡
④保険期間5年
⑤タイプ掛け捨て
⑥建物評価7億円
⑦保険金額4億2千万円
⑧施設賠償責任特約保険金額5億円
⑨個人賠償責任特約保険金額1億円
⑩水災不担保、電気的機械的事故不担保、災害緊急費用特約なし
築年数 |
東京海上 日動火災 |
三井住友 海上火災 |
あいおい ニッセイ 同和損保 |
損保 ジャパン 日本興和 |
保険 名称 |
新マンション 総合保険 |
すまいの保険 マンション 管理組合用 |
家庭総合 マンション 管理組合用 |
マンション 総合保険 |
保険料 率区分 |
8区分 |
築29年目迄 は1年毎 |
築29年目迄 は1年毎 |
10区分 |
新築 | 827 | 1,298 | 905 | 955 |
築5年 | 1,237 | 1,566 | 1,263 | 1,133 |
築10年 | 1,646 | 1,946 | 1,790 | 1,628 |
築15年 | 2,237 | 2,538 | 2,525 | 2,525 |
築20年 | 3,104 | 3,469 | 3,404 | 3,028 |
築25年 | 3,829 | 4,929 | 3,775 | 試算困難 |
築30年 | 4,579 | 6,536 | 4,221 | 試算困難 |
築35年 | 4,579 | 6,536 | 4,221 | 試算困難 |
※保険料の単位は千円です
また、近年毎年のように全国で発生する大規模自然災害により保険会社の支払額が激増しています。そこで、2019年10月に続き2021年1月にも純保険料率の参考純率が平均4.9%値上げされます。
※純保険料率とは保険会社が保険金支払いのために積み立てておくべき保険料の中の比率のことで、参考純率とはその基準料率のことです。
【理事長】少しでも保険料を安くする。何かいい方法はないのかな?
【管理士】契約終了(満期前)に現在の保険契約を解約して、新しく長期契約を結び直すことを検討されたらどうでしょうか
火災保険は5年の長期契約が主流となっています。
例えば、契約開始が築24年目と築25年目では、保険料率区分が変わって保険料が大幅に異なる場合があります。
前記の比較表では、東京海上の場合ですと、築24年目では310万円で築5年目では382万円と72万円も保険料が高くなります。
又、築年数の問題でなく、2021年1月には保険料率の値上げも予定されています。
2020年中に長期契約すれば、値上げ前の保険料率が適用されます。
火災保険は満期前に解約しても、未経過分の保険料はきちんと戻ってきます。
ですので、満期前でも保険会社変更は可能なので、早めに複数の保険会社を比較検討することをお勧めします。
マンション向け火災保険に関しても、管理会社にお任せでなく、自分たちで考えるきっかけとなり、保険料が管理組合会計にいかに大きな影響があるかを実感することができます。
【理事長】それにしても、築年数だけで保険料が決まるというのは納得いかないな?
【管理士】確かに、管理状態やメンテナンスの良し悪しで、建物設備の劣化状態は異なります。だとすれば漏水事故などの発生確率も異なります。
【管理士】お勧めの保険があります。
ある管理組合に2019年に保険料率がアップする前に、契約開始後4年目の保険を解約して、保険期間5年で新たな保険に入る直すことを提案しました。
その時、比較検討の対象として、この保険を提案しました。
事前のマンション管理適正化診断サービスを受けて「A」評価を得ました。
それで、同じ補償内容で提示された保険料が他社保険会社の保険料より5年契約で150万円ほど安く、この火災保険に加入しました。
日新火災のマンションドクター保険は、マンション管理状態の診断結果を保険料に反映する新しい試みの保険です。
東京にある地区25年のあるマンションでは、従前加入していた保険料が期間5年で780万円、満期に伴う契約更新時の保険料が1300万円に跳ね上がる見積提案となりました。
そこで、診断を受けたところ、最高のS評価を受けました(評価はS/A/Bの3段階)
日新火災からの提案は600万円台の保険料になったとのことです。
もちろん、管理状態が良くなければ(評価が低ければ)他社保険より高い保険料となる場合もあります。
保険の特徴は、無料の「マンション管理適正化診断サービス」を受けることが条件となっています。
診断項目は14項目で、満点は5つの経年区分により異なり、築20年以上は64点となります。
評価は高得点順にS/A/Bの3段階に評価されます。
配点は64点中、給水管と雑排水管の項目に43点が配点されています。
これは、マンションの保険事故は7割が築20年以上で生じ、内容の7割が漏水事故という事故発生状況に応じた配点となっています。
適正化診断サービスを受けるには、提携先の一般社団法人日本マンション管理士会連合会(日管連)が最初の窓口となり、依頼先のマンションにマンション管理士を派遣し診断する手順となっています。
マンション管理会社は大手の火災損害会社の代理店となっています。
但し、日新火災の代理店となっているケースは少ないです。
ですので、マンションドクター保険を契約する場合は、管理会社は代理店となりません。
管理会社以外の代理店を経由して契約することになります。
従って、保険事故発生の場合は、管理組合はこの代理店に指示して保険処理することになりますので管理会社任せとはいきません。
マンション向け火災保険に関しても、管理会社にお任せでなく、自分たちで考えるきっかけとなり、保険料が管理組合会計にいかに大きな影響があるかを実感することができます。
保険料を安くすることもできるかもしれません。
今加入する加入しないは別にして、無料の「マンション管理適正化診断サービス」を受けてみてはどうでしょうか?
どんな評価項目があるかを知ることができますし、診断レポートがもらえますので、管理上の問題点も知ることができて、大変参考になると思います。