様々な管理制度
区分所有される建物の管理には、どの国も苦労しているようです。
また、区分所有建物の成立過程などの違いで、その管理制度には異なる点も多いようです。
フランスの管理制度
国土交通省が提唱する「第三者管理者制度」のモデルだと言われています。
フランスでは、新設だけでなく、当初は、棟全体で賃貸だったものが、住戸単位で売却され、あるいは、相続の際に相続人に分割されることで、区分所有建物になったものも数多くあります。
従って、マンションの建物の特性や居住者の社会経済階層は日本以上に多様です。
管理組合には、総会、理事会が設けられ、管理者も必ず設置されます。
理事は区分所有者から選任されます。
総会が決定機関、管理者が管理実行機関、理事会が管理者の監督機関となります。
管理者は「サンディク」と言われ、報酬をもらうには国家資格が必要です。
管理者は、総会で選任され3年を超えない期間で任期が定められます。更新も可能です。多くの場合は、管理会社が管理者となっています。
※管理会社とありますが、日本の管理会社とは少し意味が異なり、マンション管理の専門家のみで構成される小規模な事務所のことを指します。
理事会は区分所有者のみで構成されます。
総会の議案書は、管理会社と区分所有者の意見を聞き、理事会が作成します。
また、予算決算書は総会開催前に理事会で検査を行います。
ドイツの管理制度
日本の「区分所有法」のモデルはドイツの「住居所有権法」だそうです。
ただし、日本の「区分所有法」に比較して、区分所有者に対する義務・責任はかなり厳しい内容となっているそうです。
区分所有者の共同体は、「ゲマインシャフト」と呼ばれます。
総会と管理者があって、総会で決定したことを管理者が執行します。
区分所有者を構成員とする理事会を設置することも可能です。
理事会は管理者を監督し、総会前には予算決算書の検査を行います。
管理者は「フェアヴァルター」と呼ばれます。
管理者は、管理費の徴収、年間維持管理予算の作成、総会の議長、各住戸への広報、管理員の雇用と管理、工事入札と発注など区分所有建物管理のすべてを行います。総会で職務権限を制限拡大することができます。
管理者には、建築・財務・法律に詳しい「弁護士」「銀行員」「公証人」や管理会社の場合は中堅クラスの人がなったりします。
フランスと違い、国家資格はありませんでしたが、2020年に管理者の認証制度(名称独占)が始まりました。
イギリスの管理制度
イギリスの区分所有建物はリースホールドで所有されます。
共用部分(スケルトン部分)は地主が所有し、住居部分(インフィル部分)は居住者が期間を定めて保有します。
その期間は、99年、125年、999年等だそうです。
日本の借地権方式の分譲マンションに似ています。
管理方式には3方式あるそうです。
①地主が管理する
②地主が共用部分を持つが、居住者が組合を作り管理する
③居住者の組合が地主から共用部分を買い取り、自分たちで管理する
組合は法人格を持ち、会社のように定款を定めて、活動内容を決めるそうです。
実際の管理はPM(プロパティーマネージャー)という職種の人が行うようです。
アメリカの管理制度
一生涯賃貸住宅で暮らす人も多いようです。購入するにしても一生涯の買いものという感覚はなく、なんども買い換えるそうです。
修繕積立金はアメリカにもあるそうで、州によっては、州政府に届け出る必要があるそうです。購入予定者はいつでもその確認ができるそうです。
また、管理会社は開発分譲会社の子会社や系列会社ではないそうです。
管理会社の変更も頻繁に行われるようです。
アメリカでは、理事会の権限が強く、管理者はいません。理事長も管理者ではありません。理事会は管理費の賦課、居住ルールの設定、管理業者の指名などが行なえます。
理事会を支援するために、オンサイトマネージャーという職種があります。
オンサイトマネージャーは、各マンションに常駐・専従し、管理費等の徴収、予算案の作成、積立金の運用、職員の雇用・監督などの業務を行います。
管理会社より派遣される場合と管理組合に直接雇用される場合があります。
専門家の活用はいずれの国でも
フランス、ドイツ、イギリス、アメリカの4カ国のマンション管理制度の概要をご紹介しました。
各国で区分所有建物の生い立ち(歴史・背景)が異なり、制度の違いは有るようです。
ただ、いずれの国でも、理事会や総会における意思決定のもと、「専門家」が日々の管理運営を行っているようです。
コメントをお書きください