経営的取組みの必要性と可能性

人口減少と住宅が余り、空き家が増える状況において、マンションを長期に存続させるには、マンションの魅力をさらに高める必要があります。そのために、管理組合が率先して魅力的な施設やサービスを導入したり、中古売買に関わったりすることが必要となってきます。

実践例に学ぶ

分譲マンションにおいてどんな取り組みがあるのか、もし実践するならどんな留意点が必要なのかを知ることは、そのための準備ができ、他のマンションの一歩先を行けることになります。

 

①スクールバスの運営

学校が近くにないため、開発分譲会社が企画したもので、分譲時に全員が加入する組合とは別の別組織を立ち上げて運営しています。一時、その存続をめぐる議論がありましたが、資産価値を維持するために必要と共通認識され継続されています。中古売買時には同組織への会費の支払があることが明記されています。

 

②高齢者デイサービスを実施

集会所の建替えに際して、福祉施設を計画したものです。特別決議の3/4にわずかに届かず未実施となりましたが、今後必要とされる取組みです。

 

また、マンションの専有部分を福祉事業者が購入または賃借して、サービスを提供する例があります。管理組合が契約の当事者になるわけではありませんが、専有部分を住宅用途以外に利用するには、管理組合の承認・規約の改正が必要になります。広い意味での経営的管理と言えます。

 

③共用施設で保育所を運営

大規模マンションでは、保育所を併設する例は少なくありません。それらの多くは専有部分を利用しますが、あるマンションでは共用施設を保育所に提供しています。将来的には高齢者施設に切り替えることも想定しているそうです。

 

④青空市場の開催

団地商店街が閉鎖されたことから定期的に青空市場を開催している事例です。管理組合の役割は、場所の提供と事業者の誘致までです。出店は各事業者が経営しています。

 

⑤カーシェアリングの導入

カーシャア事業者と管理組合が契約しています。興味深いのは、利用料が一定額を上回るまでは、管理組合が費用負担する仕組みです。郊外にあるこのマンションでは、2台利用を求める世帯が多く、カーシェアは駐車場の必要数を減らす効果があります。このため管理費からの支出が定着しています。

 

⑥地を購入

このブログでも紹介させて頂きましたが、京都にある西京極大門ハイツでは、隣接した土地と建物を管理組合が購入しています。

目的は、将来の建替えに備えてです。(現状敷地面積では、建替え時に戸数が減るため)

余剰資金で高齢者へのリバースモゲージも計画しています。

 

⑦競売不成立の住戸を管理組合が購入

リゾートマンションなどの一部では、管理費等の滞納額が中古価格を上回り、競売しても不成立となるケースがあります。そこで、管理組合が自己競落して、滞納額を免除後に販売するというものです。

 

管理の目的外ではないかとの訴訟もありましたが、判決では、管理上やむを得ない措置として、訴えは却下されました。

 

経営的取組みをする時の留意点

留意点は大きく2つあります。

 

1つは、区分所有法における「管理の目的の範囲内である」ことの検討です。

 

2つ目は、管理組合の財政基盤を整えることです。

 

また、事例の①から⑤は管理組合ては別の組織が経営を担っています。

管理組合は場所を提供したり、会費の徴収を代行したりして支援しますが、事業費そのものは負担していません。

 

事例⑥と⑦は管理組合による事業です。また⑤は一部を負担しています。

これらを行うには財政基盤が必要です。

 

そして、費用支出については、その必要性を丁寧に説明して、全員合意に近づけるように進めることが必要です。

 

これを遂行するのは、管理組合を支援する専門家の役割も大きくなります。マンション管理士等も経営管理の可能性について知見を深めておく必要があります。