ようやく動き出したスラム化回避マンション政策(その①)

2029年、築50年超分譲マンション92万戸へ。建物はボロボロなのに修繕積立金は枯渇し、必要な修繕はままならない。かと言って年金暮らしがほとんどを占める高経年マンションでは、修繕積立金の値上げ、一時金の徴収は行えずまさに「八方ふさがり」状態。スラム化を回避するために今の内になんとかしなければ、行政に膨大な財政的・人的負担が発生します。ようやく動き出したスラム化回避のマンション政策(国土交通省)。その中身は・・・


歪められて来た住宅政策

分譲マンション戸数は、2019年末に666万戸、1500万人(国民の1/8)が住んでいます。

東京都では3.7世帯の内1世帯、大阪では、5.3世帯の内1世帯はマンションに住んでいることになります。

 

築30年以上の高経年マンションは、2019年末時点213万戸、2029年には、384万戸になります。築50年以上でも92万戸にもなります。

 

また、空き家化の問題も深刻で、2018年総務省調査では、846万戸の空き家(空き家率13.6%)が既にあり、2028年には1,608万戸(空き家率23.2%)になると予測されています。

 

向かい両隣4軒の内、1軒は空き家という凄まじい状態です。

東京都民全員1住戸に1人住んでも300万戸以上余るという状態です。

 

そもそも1968年には、住宅戸数が世帯数を上回りました。52年前のことです。

 

そんな中でも戸建て住宅も含めて、最近まで年間100万戸近い住宅が新設されています。分譲マンションもここ数年は少なくなってきましたが、それでも年間10万戸弱が新規分譲されています。

 

多くの国では、住宅の総量規制(目標)があり、それに応じて、新設されています。日本には総量規制(目標)がありません。こんな状態の国は、間違いなく日本だけです。

 

1991年のバブル崩壊後も景気対策として、住宅建設が政策的に推進されてきました。しかも持ち家推進の名の下に、個人に住宅ローンという超長期の借金を負担させて行われてきました。

 

景気対策としての効果は疑問もあり、結局のところ建設業界のために行われてきただけとの意見もあります。


「建替え」から「長寿命化」「敷地売却」へ

高経年マンションに対して、「建替え」という対応策があります。

 

その実績は、2020年4月時点累計で、254件・19,900戸でしかありません。

 

「建替え」は費用負担が大きく、建て替え期間中の引越・仮住まい確保など問題は多く、実現性は極端に低いと言わざるを得ません。

 

老朽化したマンションは、戸建てに比べて周辺の居住環境悪化の影響は大きく、このまま放置すれば、近い将来行政に膨大な財政的・人的負担が発生します。

 

今の内になんとかしなければという事で、「長寿命化(100年マンション化)」「敷地売却」という対応策へ舵を切りました。

 

次回は、分譲マンションが抱える課題について、再確認したいと思います。