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65歳受給と75歳受給どっちがお得?

繰り上げ受給・繰り下げ受給とは?

今国会で成立する見込みの年金制度改定では、繰り下げ受給可能な年齢が「75歳」迄に引き上げられます。

 

昭和36年4月2日以降に生まれた人は、厚生年金・国民年金ともに65歳誕生月より支給開始が原則です。

 

 

◎繰り上げ受給とは

 

ですが本人の希望で受給開始を65歳誕生月前から受給開始することができます。これを繰り上げ受給と言います。最も早い場合は60歳誕生月より受給開始することができます。

 

但し、ひと月早める毎に0.5%減額されます。64歳誕生月から受給した場合は6%(0.5%×12ヶ月)減額されます。

60歳誕生月から受給した場合は30%(0.5%×60ヶ月)減額されます。この減額は65歳を過ぎても減額されたまま終身変わりません。

 

※今回改定案では、0.5%の減額率が0.4%に改められます。

 

◎繰り下げ受給とは

 

逆に本人の希望で受給開始を65歳誕生月後に受給開始を遅らせることができます。これを繰り下げ受給と言いま

す。最も遅い場合は70歳誕生月より受給開始することができます。

 

そしてひと月遅らせる毎に0.7%増額されます。66歳誕生月から受給した場合は8.4%(0.7%×12ヶ月)増額されます。70歳誕生月から受給した場合は42%(0.7%×60ヶ月)増額されます。この増額は終身変わりません。

 

今回改定では75歳誕生月まで遅らせることを可能とします。75歳誕生月まで遅らせた場合は84%(0.7%×120ヶ月)増額されます。もちろんこの増額は終身変わりません。倍近い年金額になります。

 

人生100年時代、年金受給開始時期を遅らせて、その分年金額を多くして下さい。という趣旨です。

 

65歳受給と70歳受給、75歳受給どっちがお得?

◎人生100年としたら、75歳受給開始がお得です。

 

年金額を月額15万円(年額180万円)として計算してみます。

 

・65歳受給開始の受取総額:180万円×35年=6,300万円

 

・70歳受給開始の受取総額:255.6万円×30年=7,668万円

 

・75歳受給開始の受取総額:331.2万円×25年=8,280万円

◎人生90年としたらどうなるでしょうか?70歳受給開始がお得です。

 

・65歳受給開始の受取総額:180万円×25年=4,500万円

 

・70歳受給開始の受取総額:255.6万円×20年=5,112万円

 

・75歳受給開始の受取総額:331.2万円×15年=4,968万円

 

人生80年としたらどうなるでしょうか?65歳受給開始がお得です。

 

・65歳受給開始の受取総額:180万円×15年=2,700万円

 

・70歳受給開始の受取総額:255.6万円×10年=2,556万円

 

・75歳受給開始の受取総額:331.2万円×5年=1,656万円

 

◎65歳受給と70歳受給の損益分岐年齢は82歳です。

 

・65歳受給開始の受取総額:180万円×17年=3,060万円

 

・70歳受給開始の受取総額:255.6万円×12年=3,067万円

 

・75歳受給開始の受取総額:331.2万円×7年=2,318万円

 

◎65歳受給と75歳受給の損益分岐年齢は87歳です。

・65歳受給開始の受取総額:180万円×21年=3,780万円

 

・70歳受給開始の受取総額:255.6万円×17年=4,345万円

 

・75歳受給開始の受取総額:331.2万円×12年=3,974万円

 

2018年の日本人の平均寿命は男性81.25歳、女性は87.32歳です。

 

ちなみに、平均余命は男性の場合、65歳の人は19.70年、70歳の人は15.84年、75歳の人は12.29年。

女性の場合は、65歳の人は24.50年、70歳の人は20.10年、75歳の人は15.86年 だそうです。

 

税金・社会保険料のことも考える必要あります。

繰り下げによって受け取る年金額が増えた分、税金や社会保険料が多く天引きされて、手取り金額が少なくなってしまう場合があります。

自治体によって異なりますが、たとえば東京23区や大阪市、横浜市などの大都市では、65才以上で扶養家族が妻1人の場合、夫の年金収入が年間211万円(月額約17万6000円)以下なら住民税が非課税になります。

健康保険料や介護保険料などの社会保険料も大幅に減免されます。また、1か月の医療費の自己負担額が一定額を超えると超過分が還付される健康保険の「高額療養費制度」の自己負担上限額も、70才以上なら2万4600円までと低く抑えられます。

しかし、年金額が211万円を1万円でも超えると高額療養費制度の上限額は月5万7600円と倍以上高くなり、社会保険料も跳ね上がり手取り額は大幅に減ります。

これらの増えた社会保険料を考慮すると、70歳受給に繰り下げで得するのは実質82才よりもっと後になりそうです。