一般的傾向として、新築マンションの販売時の管理費は高く、修繕積立金は低く設定されています。
そして、築20年、30年と経過するほどに、管理費は高止まりしたままとなり、修繕積立金は不足し、修繕積立金を大幅に値上げするか、値上げできない場合などは、大規模修繕工事などが出来なくなり、マンションの劣化が進みます。
管理費と修繕積立金の違い
そもそも管理費とは、日常的な管理業務の費用の支払のために集めるお金で、修繕積立金とは、数年から十数年周期に行う大規模な修繕工事のために積み立てるお金です。
●管理費の用途例・・・清掃費、管理員費、共用部の水道光熱費、設備点検費用、植栽の手入れ費用など
●修繕積立金の用途例・・・外壁の塗り替え、屋上の防水工事のやり直し、鉄部の塗装、機械式駐車場の交換、給排水管の取替など
管理費は無駄を省き、同じか、より安い額で、いかに業務内容の質を高めるかがポイントです。
修繕積立金は、いざという時に不足することがないようにしなければなりません。
何故?
何故、管理費は高めに、修繕積立金は低めに設定されているのでしょうか?
ディベロッパー(分譲マンションの開発販売会社)は、系列の管理会社にマンション管理業務を受注させ、管理業務委託費が管理組合から支払われます。
そして、系列の管理会社が十分に売上利益を上げられるように高めに設定がなされています。
将来(5年~10年後)の値引き要求にも耐えられるように。
一方、修繕積立金は、管理会社にとって、すぐに売上となるお金ではありません。
そして、ディベロッパーとしては、売りやすくするためにもに、低めに設定します。
マンション購入者も毎月の「住宅ローンの返済額」と「管理費+修繕積立金」の合計額が支払い可能かどうかは検討しますが、管理費と修繕積立金の中身の妥当性までは検討しません。
実際、購入時に支払う修繕積立基金と購入後に毎月支払う修繕積立金12年~15年分を合計して、1回目の大規模修繕が行われますが、このとき、ほぼ全額を使い切り、2回目以降の大規模修繕工事を行うためには、大幅な修繕積立金の値上げと、一時金として数十万円を追加徴収するケースがほとんどです。
ときには、1回目の大規模修繕を行うために、5,6年目から修繕積立金を倍近く値上げするケースも多くあります。
管理費会計の罠にもご注意
管理費は高め設定されていますが、それだけではありません。
すでに、ご紹介したように、管理費会計には、多額の駐車場使用料等が繰り入れられています。
これを含めた管理費会計予算が組まれており、実際は毎月徴収されている管理費以上の予算が管理業務に使われています。
超高層マンションの修繕積立金
最近、急増しているタワーマンションですが、修繕積立金事情は、どうなっているのでしょうか?中低層マンションとは違うのでしょうか?
50階を超えるあるマンションの事例をご紹介します。
専有面積は55㎡から70㎡で、分譲価格は6000万円台から7000万円を超える高額物件です。
このマンションの管理費は1㎡当たり216円。修繕積立金は87円。
70㎡の住戸で、管理費が15000円、修繕積立金が6000円で月額合計が21000円ということになります。
ローンの支払はきついもののなんとかなる範囲となっています。
ところが、修繕積立金は築年数の経過とともに自動的に上がっていくしくみとなっていました。
5年後には2.5倍の217円、10年後347円、15年後420円と当初設定額87円の4.8倍となります。
70㎡の住戸で当初6090円だった修繕積立金が15年後には、29,400円に跳ね上がります。
管理費と合わせて約45,000円となります。15年後ではローンは普通まだ残ってますよね。
実は、これだって本当に十分なのかどうかはわからないのです。
50階を超えるようなタワーマンションの大規模修繕工事などは、ほとんどまだ実績がないからです。
では、どうしてタワーマンションの修繕にお金がかかるのでしょうか?
例えばエレベーター。超高層建物だとエレベーターも高速で上昇する高性能なものが必要となります。
各住戸に給水するポンプも高さ200mにくみ上げるには高性能なものが必要になります。
高額な免震装置なども実は30年程度で交換する必要があるのです。
また最近では、地震対策として非常用発電機なども設置しています。
これらは発電機自体が高額な上に、重油などの備蓄保管も必要となります。
こうした設備はみな20年から30年で更新時期がきます。
高性能なうえに特注品も多いので部品交換にも制約があり、修繕費は必然的に高くなります。
また大規模修繕工事における外壁工事も中高層のマンションとは桁違いにお金がかかります。
タワーマンションは、そもそも足場を組むことができません。
屋上からぶら下げるゴンドラなどでの作業となりますが、ゴンドラは小さくて作業効率が悪いうえに、高層部を中心に風、雨などの気象条件の影響を受けやすく、中高層と比べて工期が3倍以上かかるとも言われています。
その結果、大規模修繕工事などは中高層のマンションの数倍はかかると言われています。