すべての相続人が相続放棄した場合、被相続人(死亡者)のマンションはどうなるのでしょうか?管理組合としては、何をすれば良いのでしょうか?
管理組合など債権者や利害関係者にとって困った状態になります。
その後始末をするために、民法では「相続人の不存在」という定めがあります。
民法951条には、「相続人のあることが、明らかでないときは、相続財産は、法人とする」とあります。
すなわち、『被相続人の財産』そのものが法人となり、権利義務の主体となります。
相続財産法人の意思を実現するため、管理人を選任します。
この選任された管理人が相続財産の処分方針などを策定して実行します。
相続財産管理人は、債権者など遺産の利害関係者または、検察官らが請求して選任されます。
その後、以下の手続きを行います。
①家庭裁判所により、相続財産管理人が選任されたことの公告
②相続債権者や受遺者に対する精算手続きの公告および精算
③さらに、相続人を探すための捜索の公告
④特別縁故者に対する相続財産の付与
以上のように、相続人が現れないときは、精算の結果残った財産は特別縁故者に分与されるか、国庫に帰属します。
マンションのような不動産については、相続財産管理人が売却などをして現金で収めます。
相続人は、相続放棄した後も、すべての責任がなくなった訳ではありません。
民法940条には「相続放棄した者は、相続財産管理人が選任されるまでは、自己の財産を扱うのと同じ注意を払って遺産の管理を続けなければならない」とあります。
管理組合としては、相続財産管理人が選任されるまでは、相続放棄したとしても、この相続人と連絡等を取ることになります。
滞納された管理費・修繕積立金などの回収は、相続財産管理人が選任されるまでは、なにもできません。
管理組合が相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることはできます。
ただし、申し立てには予納金と呼ばれる相続財産管理人へ経費や報酬にあてる費用を事前に収める必要があります。予納金は20万円程度から100万円程度になります。
遺産処分で余れば、予納金は戻ってきますが、不足すれば戻ってきません。
高経年の古いマンションの場合、よほど立地条件などが良くないと、売却・賃貸が困難となり、相続放棄される可能性はますます高まっていくと思われます。
区分所有法では、区分所有者がいない住戸が存在することは想定外です。
連絡先や所有者が不明の住戸があるマンションは、築40年以上が29%、築30年以上40年未満で24%との調査結果もあります。
まずは、区分所有者や入居者の名簿の最新化に努め、連絡先や所有者が不明となることを避けるのが第一歩です。