2018年の国土交通省の調査では、不動産登記簿上で所有者の所在が確認できない土地が20%もあるそうです。相続時に登記されない土地建物が増えています。
引き継ぐ住まいが遠方にあったり、資産価値が低いなどの理由で相続放棄が増えているそうです。土地や戸建て住宅だけでなく、『分譲マンション』でも増えています。
国土交通省が行ったマンション総合調査(2018年)では、連絡先不通または所有者不明の住戸がある分譲マンション管理組合は全体の13.6%もあります。
もちろんできます。
但し、手続きは複雑で、また、マンションのみを相続放棄することはできません。
ここ重要です。
相続放棄は被相続人(死亡者)の全財産を放棄することが必要です。
預貯金は相続するけど、マンションだけ相続しない、などはできません。
相続放棄の手順は大きく3段階となります。
Step1:他の相続人の調査・確定
Step2:被相続人(死亡者)の資産・負債の調査・確定
Step3:単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかの相続方法を選択
まずは、誰が相続人かを確定させることから始まります。
民法で定められた相続人を「法定相続人」と呼び、その範囲は決まっています。
相続の優先順位は決まっています。
被相続人(死亡者)の配偶者は常に最優先の相続人です。
第①順位:子供です。子供がすでに死亡していたら、子供の子になります。
子供やその子供もいない時は、第②順位の人に相続権が移ります。
第②順位:父母です。父母がすでに死亡していたら、祖父母になります。
父母や祖父母もいない時は、第③順位の人に相続権が移ります。
第③順位:兄弟姉妹です。兄弟姉妹がすでに死亡していたら、その子供になります。
また、被相続人が結婚前に子供がいた場合で、遺産分割協議後にその存在が判明した場合は、その協議は無効になります。
また、配偶者や子供が相続放棄を行う場合は、第②順位や第③順位の人に相続が引き継がれます。ですから、相続人の調査・確定が必要です。
相続は資産だけでなく負債も相続します。
資産とは、預貯金・株式など有価証券・不動産など
負債とは、ローン・抵当・借金・保証債務など
資産内容は比較的容易に確認できますが、負債は慎重に内容を確認する必要があります。
ローンが残る場合、オーバーローンとなるのか、ならないのか、見きわめも必要です。
調査した結果、負債額が資産額を超えた場合、どのような相続方法を選択するかが重要になってきます。
単純承認は一般的な相続方法で、資産・負債すべてを相続します。
単純承認は特に申告の必要もなく、3ヶ月以内に限定承認、相続放棄しなければ、単純承認したものとみなされます。
限定承認は、相続財産から債権者に負債を弁済し、財産が残った場合は相続財産を受けることができます。負債の方が多かった場合、不足分を弁済する返済義務はありません。
3ヶ月以内に家庭裁判所に申告しなければなりません。
単独では申告できず、相続人全員の合意が必要です。
また、手続きは非常に複雑で弁護士や税理士など専門家に依頼する必要があります。
相続放棄は、申告者がすべての相続を放棄することです。単独で申告できます。
但し、3ヶ月以内に家庭裁判所に申告しなければなりません。
明らかに負債が大きい場合や相続争いに関わりたくない場合などは、選択する価値があります。
但し、自分以外に相続人がいる場合、安易に相続放棄するとかえって面倒にしてしまうこともありますので注意が必要です。
単純承認とみなされる理由には、3ヶ月以内に限定承認、相続放棄を申告しなかった場合だけでなく、相続財産の一部処分をした場合も単純承認とみなされます。
例えば、マンションを賃貸していて、その賃料の振込先を相続人の口座に変更した場合などです。
また、生命保険の保険金の受取人が被相続人となっていた場合の保険金は遺産となり、これを受け取ると相続放棄できません。
保険金の受取人が相続人や被相続人以外の場合は、保険金は遺産となりません。
相続放棄に関わる費用は、印紙代、戸籍謄本、住民票取得手数料など4,000円前後。
あと、弁護士(5万円程度)、司法書士(3万円程度)、行政書士(5千円程度)などへ依頼すればその費用がかかります。
相続人に多額の負債があり、配偶者と第①順位の子供が相続放棄した場合、第②順位や第③順位、その子供たちが相続人となってしまいます。
親族関係を把握し、法定相続人全員で相続放棄しないと多額の負債を抱えることになり、大きな迷惑をかけることになります。
相続放棄は事前に計画をたて、慎重に対応する必要があります。