外壁改修工事は躯体とよばれるコンクリートなどでできた建物の構造体の補修工事と、その上に施された仕上げ材、すなわち塗装やタイルの修繕工事が含まれます。
また、シーリング材と呼ばれる防水材も外壁周りに多くあることから外壁補修工事含まれる場合もあります。
これらは、大規模修繕工事の中心となる工事で、2回目以降の大規模修繕工事でも実施することになります。
エフロレッセンス
壁面や天井に水がしみ出たような白い痕が出てくることがあります。
これは「エフロレッセンス」と呼ばれる症状です。時にはこのしみ出た水がつららのような白い結晶になることもあります。
エフロレッセンス自体が建物に影響を与えることはありません。しかし、エフロレッセンスが発生するのはコンクリートのひび割れから水がしみ込んだ証拠。
しみ込んだ水は鉄筋を錆びさせたり、凍害によるコンクリート欠損などを誘発させます。
大切なのは原因となるひび割れと漏水の補修をしっかりすることです。
鉄筋爆裂
コンクリートの一部が欠けて落下したり、落下した穴から赤茶色の水が流れ出ることがあります。この赤茶色は実は内部の鉄筋の「錆」なのです。
このように鉄筋が錆びて体積が膨張してコンクリートを押し出してしまう症状を「鉄筋爆裂」と呼びます。
ひび割れ
コンクリートの建物は、新築時に多く含まれていた水分が日数をかけて蒸発し、乾燥することで強度が増していく構造物です。
また、コンクリートも金属と同様、熱膨張により体積が変化します。このコンクリートの乾燥収縮や熱膨張により、コンクリートの壁面等にひび割れが生じます。
ひび割れは地震の影響で発生するだけではなにのです。
ひび割れへの対応は、大きさや発生部位、発生原因によって、補修の方法等を判断することになります。
補修方法としては、ひび割れにフィラーを充填する方法や、ひび割れをU字型にカットして弾性シーリング材を充填する方法などで行います。
ひび割れ補修(実数精算方式)
なお、ひび割れ等の補修工事は、仮設足場を設置した後の詳細な調査を実施しないと、補修対象の正確な数量を把握できません。
このため、工事の見積・発注時には、補修内容別に一定の数量を指定(推定)して施工会社と工事契約を取り交わし、工事完了後、実際に補修工事を行った量の増減で工事費を精算する「実数精算方式」を用いることが通例となっています。
タイル補修も実数精算方式を採用します。
浮き・剥離・ひび割れ
外壁に貼られているタイルは下地のコンクリートにモルタルや専用の接着剤で貼り付けられており、コンクリート躯体の乾燥収縮や温度伸縮等によって接着力が低下すると、タイルの浮きや剥離へと進行します。
また、外壁に貼られているタイルは、下地のコンクリートのひび割れに伴い割れてくる場合もあります。
タイル補修方法
浮いてしまっているタイルの場合は、その周囲の目地部分に穴を開けて、タイルの裏側など空隙部分に接着剤を充填する補修方法があります。
マンションの外壁に用いられているタイルは、「特注品」であったり、大規模修繕工事の時には生産中止となっていたりする事例が多く、貼替えに用いるタイルは、新築時の予備が多数無い限り新規に制作することになります。
陶磁器のタイルは瀬戸物や唐津焼と同じ「工芸品」であるといっても過言でなく、既存のタイルと同色・同質感の新規タイルを焼くことは難しいのが現状です。
通常、補修用タイルの制作にあたっては、既存タイルをサンプルとして採取して、これを参考にしながら「試験焼き」を行います。出来上がったものを現地で確認し、同色・同質感と判断できた状態で必要数量分の制作に入るのですが、この間に相当な時間(1回の試験焼きに1ヶ月、本焼きに2ヶ月以上)を要することから、工事の準備期間に余裕のあるスケジュールを立てる必要があります。
外壁塗装の目的
マンションの外壁塗装(塗替え)に求められる機能性は、2つあります。
1つ目は、塗膜による躯体の保護機能で、コンクリートの中性化抑止効果やひび割れ等の再発防止等が目的となっています。2つ目は、美観の維持に関するもので、主に塗膜の表層部がその役割を果たし汚れを付きにくくしたり、色や艶が褪せないようにしたりする機能です。
大規模修繕工事における外壁塗装では、この両方の機能性を兼ね備えた複層塗材による使用が主流となっています。
微弾性フィラーとアクリルシリコン樹脂系
ひび割れの再発防止の役割を果たす下塗り材には、「微弾性フィラー」と呼ばれる材料が用いられ、既存塗膜との密着を確保する機能と、コンクリートのひび割れ等を補修した箇所を覆う役割を担っています。
一方、美観の維持が求められる上塗り材(通常は2回塗りなので、中塗り材を兼ねる)には、汚れにくさを追求したアクリルシリコン樹脂系の材料を多く用いられることが多くなっています。
シーリング材とは、アルミサッシ窓まわりや、タイル目地の一部、外壁と各種金物類の取り合い分等に施されている水密性(※)を保つための柔らかい詰め物のことです。
※内部に液体が流入しない性質のこと
漏水につながる危険性のある場所も多いことから、直接雨のかかる外壁面の目地や、工事に足場が必要な部位に施されている既存シーリング材は、それら全てを撤去して、新しいシーリング材を施す(打ち替える)ことが、大規模修繕工事の際に必要となる場合がほとんどです。
一方、通常雨のかからない廊下側の玄関扉廻りやバルコニー内部のアルミサッシ周囲のシーリング材などは、劣化した部分のみを新しいシーリング材に替えるケースもあります。