016年発生の熊本地震で被災した2つのマンション管理組合が地震保険の損害認定方法について疑問の声をあげています。
共に再調査で「一部損」から「半損」となり、保険金額は10倍の約8000万円が支払われたが、端緒は共に管理組合による再調査の要請でした。
組合役員は「われわれは認定の仕方を知らず、調査人も正確に理解していない」と不満を隠さない。
損害認定結果をめぐるトラブルは東日本大震災でも起きました。
支払額が大きいほど住民の負担は軽くなり、復旧に向けた合意形成はしやすくなる。
管理組合が必死になるのは当然だが、調査人は数をこなすことに追われていたりする。
一般社団法人日本損害保険協会は「損害認定では迅速性と正確性が求められるが、災害時鑑定人が足りず、損保会社の社員が動員されることもある。経験不足や迅速性重視で正確さにばらつきがでてしまうのは課題でもあり、対応を検討している」とのことですが、管理組合側でも認定方法の概要を把握しておく必要があります。
損害の認定方法は、地震保険約款に明記しているケースもあります。
概要は次の通りです。
(1)まず、「全損認定クイックシート」による確認を行います。
ここで、一見して全損と認定される状況があれば、調査は終わります。
(2)次に、建物全体の沈下または、傾斜の有無を調査します。
この調査は、1階部分で行います。
被害の程度の判定基準は下記の通りです。
沈下または傾斜の損害割合の高い方を採用します。
この段階で、全損と認定される状況があれば、調査は終わります。
(3)次に、柱、はりの損害状況を調査します。
この調査は、損害の最も大きい階を調査します。
被害の程度の判定基準は下記の通りです。
ちなみに
被害程度Ⅰのひび割れとは、幅約0.2mm未満のものです。
被害程度Ⅱのひび割れとは、幅約0.2mm以上1mm未満のものです。
被害程度Ⅲのひび割れとは、幅約1mm以上5mm未満のものです。
被害程度ⅳのひび割れとは、幅約5mm以上のものです。
物理的損傷割合とは、最大被害階の柱本数が20本で、被害程度Ⅲの柱が5本あれば、
5本 ÷ 20本 = 25% と求めます。
この物理的損害割合により損害割合を決定します。
(4)最後に、(2)及び(3)の調査による損害割合を合計して、最終的な損害認定を行います。
損害区分 | 全損 | 半損 | 一部損 | 無責 |
損害割合 | 50%以上 | 20%以上50%未満 | 3%以上20%未満 | 3%未満 |
ただ、仕組みは明瞭でも、「損傷の最も大きい階」の判断が見る人によって異なったり、調査時点に住民不在などで、バルコニー側の柱が全て確認できていないなどの可能性があります。
管理組合としては、安全確認の上、事前に調査したり、住民に調査協力を依頼したりする準備が必要です。
※区分所有建物(分譲マンション等)の損害割合の取り扱い
①建物: 1 棟建物全体で損害認定し、専有部分の損害が 1 棟建物全体より大きい場合に は、個別に認定します。
②家財:家財全体についてこれを収容する各専有部分ごとに行います。