【理事長】前回の大規模修繕工事で工事施工会社を公募する時に、管理会社の募集方法がマンション・ロビー内の掲示板に掲示するだけで、10社弱の応募があったけど、どうやってこのマンションが大規模修繕工事をやることを知ったんだろう?
【管理士】管理会社が日頃、付き合いのある会社に声をかけて集めたんだと思います。
【理事長】それでは、掲示板の掲示は形だけてこと?
【理事長】まあ、結局は、大手で有名な業者が一番安くて、そこに発注したから良かったたんですけどね。
【管理士】実は、それって・・・
大規模修繕工事は数千万円~数億円レベルの費用がかかる大イベントです。
知っている・知っていないで数百万円~数千万円レベルの無駄な支出したり、節約できたりします。
また、管理組合(理事会・組合員)がマンション管理に興味・関心を持つ絶好のチャンスです。より積極的に関わることで、工事後の組合運営に大きな影響を及ぼします。
管理組合(理事会・組合員)が大規模修繕工事に積極的に関わることで
①管理組合(理事会)の管理能力がアップする
②管理組合(組合員)がマンション管理運営に興味・関心を持つようになる
③修繕積立金会計の厳しさを知り、修繕積立金会計に残高を残せる
④残高が残ることで、災害発生時などの修繕にも対応できる余裕ができる
管理会社に丸投げしないで、管理組合(理事会)が汗をかくこと。労を惜しまないことが大事です。
冒頭にお話したマンションでは、実は、修繕積立金会計がこの1回目の大規模修繕工事で底をつき、2回目の大規模修繕工事を実施するために大幅な値上げを2度ほど行い、それでも足りずにどうしたら良いかということで相談を受けました。
◎公募条件
工事費を削減する方法の王道は、管理会社、分譲会社などと関係のない業者を広く公募して、いわゆる競争原理を働かせて、見積をとることです。
管理会社や分譲会社と日頃付き合いのある業者を複数紹介された場合などは、談合される恐れもあります。
特に管理会社は、修繕積立金の残高や、長期修繕計画の内容などを知っている立場なので、出来る限り、長期修繕計画通り、修繕積立金の残高いっぱいに見積金額を誘導する傾向にあります。
ですので工事業者の公募方法は、業界新聞やインターネットで間口広く公募するようにします。
◎応募条件
また、公募する時の応募条件として、例えば「過去3年間に、請負金額5千万以上の元請け実績が20件以上あること」などのハードルの高い条件を設定しないことです。
結果的に、このような条件を満足するのは、大手業者だけで、中小業者が排除されてしまいます。
工事業者に見積依頼する時に、工事項目(仕様)と数量が記載され、単価のみが空白となっている「標準見積内訳書式」が利用されます。
これは、複数の工事業者から見積提示を受け、業者選定する時に、工事項目(仕様)と数量は同じなので、価格のみを比較検討できて便利ということですが、問題があります。
結果的に、工事業者の経験が生かされず、見積額に大差ない状態となってしまいます。
10社前後の見積提示から数社を絞り込む、二次選択時には、やむを得ないですが、最終的に1社に絞り込む段階では、各業者の経験を生かして、工事範囲の絞り込み提案や、工事仕様の変更提案などを提案してもらい、競争してもらうことが必要です。
◎責任施工方式と設計監理方式
工事発注方法は責任施工方式でなく、設計監理方式で行う
責任施工方式では、工事見積において、競争原理が働ないことで一般的に割高となってしまいます。
◎「春工事」と「秋工事」と「冬工事」
工事の実施時期を見直す
一般的に2月~7月期間に行う「春工事」より、8月~12月に行う「秋工事」やお正月を挟む「冬工事」の方が工事需要が少なく安くなることが多い。
◎取捨選択
工事内容を吟味して取捨選択する
緊急性や必要性の低い工事や、足場が無くてもできる工事は延期する。
◎補助金の活用
国や自治体の補助金を活用する
国土交通省や経済産業省、都道府県市などに大規模修繕工事にも活用できる補助金制度があります。
大規模修繕工事じゃない、小規模修繕工事を組合独自で声をかけて見積をもらうことから、はじめませんか?